5月27日のヤクルトvs.中日(神宮)、8回表に川越誠司が放った右翼ポール際の打球は、ビデオ検証を経てファウル判定された。「ホームランの映像が確認できませんでした」と、試合後に責任審判がコメントするなど、現状での限界が明らかになった。
セ・リーグの“DH制”導入は、以前から議題には上がっていたが一部球団の反対で実現していなかった。しかし“投高打低”が進み、セ・リーグは3割打者が1人もいない異常事態(8月13日時点、パ・リーグは3人)。「打てない野球はつまらない」という声が多くなっていた。
また、2月に決まった「SNSへの写真および動画投稿の規定」に関しては、「他エンタメや競技に、PRや告知で大幅に遅れを取る最悪の決定」(スポーツマーケティング会社関係者)と見る向きも多かった。NPBにファンからは苦情が山のように寄せられており、9月からの規制緩和に踏み切ったとされる。
「NPBは、ネット・SNSを通じたファンの声を無視できなかった。今の時代、誰でも自分の意見を発信できる。匿名発言も少なくないが、理路整然と抗議の声を上げているものも多い。方法は異なるが、2004年の“球界再編騒動”と似た感じがする」(スポーツマーケティング会社関係者)
2004年の“球界再編騒動”は、球団数削減と1リーグ制を進める球団(オーナー)側と反対する選手会の間でストライキにまで発展した。プロ野球ファンは「選手会支持」の声を上げ、結果的に12球団2リーグ制は継続となった。
「ネットやSNSは使い方を間違えば恐ろしい武器になる。しかし正当な方法で意見を伝えることも可能な最強ツール。NPBや野球界が良い方向へ進むために、ファンの方々には有効利用してもらいたい。今回のようにNPBを動かすこともできる」(スポーツマーケティング会社関係者)
「ネット・SNSの“声”がNPBを動かしたのは間違いない。誹謗中傷で人を傷つける時間があるのなら、野球界が良くなる建設的意見を届けてもらいたい。筋が通ったものなら、“声”は届くはず」(在京球団OB)
時代に即したプロ野球を作り上げるには“ファンの声”も必要不可欠。ネット・SNSは決して“悪”ではなく、うまく活用できるものだけに、この先もこういった形での改革が進むことを願いたい。
(文・スポーツライター 田中雄也)
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