強打者の目安として、高校通算本塁打がメディアでフォーカスされることが多い。1位は花巻東・佐々木麟太郎(スタンフォード大)で高校通算140本塁打、2位は早実・清宮幸太郎(日本ハム)の111本塁打、3位は社会人のJR西日本でプレーした神港学園・山本大貴と続く。現在独立リーグで指導者を務めているNPBの元編成担当は、こう語る。

「高校通算本塁打は参考にしなかったですね。対戦相手が弱ければ本塁打を量産できますし、狭い球場はきっちり捉えなくても本塁打になるケースが珍しくない。中田翔は大阪桐蔭で高校通算87本塁打をマークしていますが、個人的には投手としての評価が高かった。右肩の故障で投手は断念しましたが、素材として非常に魅力的でした」

打撃センスが高校生離れ

 印象に残る打者を聞くと、意外な名前が出てきた。

「清原、松井レベルのスラッガーではないですが、強打者として印象に残っているのが、大阪桐蔭の萩原誠(元阪神)です。3年夏に同校が甲子園に初出場して全国制覇を飾りましたが、打撃センスが高校生離れしていました。阪神でもファームで打点王、首位打者のタイトルを獲得しましたが、1軍では目立った活躍ができなかった。三塁手で背番号31を背負い、『掛布雅之2世』と期待された重圧もあったと思います。1軍の舞台では結果が欲しいので、スイングが小さくなっていました。他球団に入団していたらどうなっていただろうと考えますね」

 大阪出身の萩原が阪神の1位で指名されて注目を浴びた1991年のドラフトで、同学年でオリックスの4位指名がイチロー(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)、近鉄の4位指名が中村紀洋(DeNA)だった。ちなみに高卒の投手では、ヤクルトの1位で石井一久(楽天GM)、大洋(現DeNA)の6位で三浦大輔(DeNA監督)が入団している。

 人生はどう転ぶか分からない。今夏の甲子園でも、後にプロ野球の世界で大輪の花を咲かせる「金の卵」がいても不思議ではない。全国的に無名だった選手が甲子園で大ブレークする可能性が十分にあり、活躍が楽しみだ。

(ライター・今川秀悟)

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