「松井は言うまでもないでしょう。高校生の中に大人が一人混ざってプレーしている感覚で見ていました。振り抜いた打球がピンポン玉のように消えていく。飛距離が規格外でしたね。昔の高校野球は芯を外しても高反発の金属バットでボールが飛んでいくので、上半身の力だけでホームランを量産する選手がいました。こういう選手は芯で捉える技術が高くないのでプロの木製バットで対応に苦しむんですよね。でも、中村は違いました。高校生の時から下半身を使って打球を遠くへ飛ばしていたので、木製バットでもホームランバッターになるなと。高橋周もすごかったですよ。東海大甲府で甲子園出場はなかったですが、木製のバットで特大アーチを打っていました。スイングスピードが並外れていて、逆方向にも打球が伸びる。中日は本拠地が広いバンテリンドームなので中距離打者にモデルチェンジしましたが、個人的には今でも長距離打者だと思っています。それぐらい高校時代のインパクトが強いですね」
真似できない打ち方
セパのスカウトを歴任した元スカウトは、清原和博(元西武、巨人、オリックス)、松井、石川昂弥(中日)の名前を挙げた。
「断トツで衝撃を受けたのは清原ですね。PL学園で1年の時からモノが違いました。打球を飛ばす能力が飛び抜けている。西武で高卒1年目で打率3割、31本塁打をマークしましたが、あんな選手は2度と出てこないんじゃないですかね。松井も異次元でした。彼のすごかったところは、修正能力です。1打席目で凡打した球を2打席目以降にきっちり捉える。パワーだけでなく、打撃技術も高校生離れしていました。石川は映像で見る機会が多かったのですが、『清原に似ている』と感じましたね。力の入った豪快なスイングでなく、手元に近いポイントで力感のないスイングから打球が飛んでいく。真似できない打ち方で、生粋のホームランバッターだと思いましたね。ドラフト1位で3球団が競合するのは納得でした。中日入団後に伸び悩んでいますが、石川の魅力である打撃の柔らかさが失われているのが気になります」