あんぱんの場面から(C)NHK
あんぱんの場面から(C)NHK
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 やなせたかしさん、小松暢さん夫妻をモデルに、苦悩と荒波を越えてふたりが「アンパンマン」にたどり着く姿を描くNHK連続テレビ小説「あんぱん」(毎週月~土曜午前8時NHK総合ほかにて放送中)。4日から始まった第19週(91~95話)は、最も重要な決断の瞬間を描いた。5年前に「漫画家になる」と宣言してから、ずっと会社員を続けてきた嵩(北村匠海)が、ついに三星百貨店を辞めて表現者として生きることを決意する。

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漫画を描く決意!

 この1週間の見どころは、嵩の心の中にある「本当の恐怖」。そして、その恐怖とどのように向き合ってきたかを追体験できたことだろう。

 嵩の葛藤は、現代の「副業クリエイター」が抱える悩みに重なる。本業を持ちながら、プロデビューをめざして創作活動を続ける者にとって「いつ本業を辞めるか」は永遠のテーマだ。経済的不安、社会的信用、そして何より「自分に本当に才能があるのか」という疑い──これらすべてが、嵩の葛藤として丁寧に描かれた。

 嵩は三星百貨店の宣伝部で一目置かれる存在となっていた。日本で初めて発売される商品のポスターデザインが「遊び心がある」と高評価されたり、芝居のポスターの制作を依頼されたりと、充実の日々を送っていた。

 そんな中、手塚治虫をモデルにした手嶌治虫(眞栄田郷敦)の漫画雑誌『新宝島』を読んだ嵩は、その才能に圧倒される。嵩は焦りだけが募り、漫画を描く時間がなかなか取れずモヤモヤする。見かねたのぶ(今田美桜)は、漫画の懸賞に応募することを嵩に勧め、背中を押した。のぶの後押しもあって、漫画を描く決意を新たにする嵩。嵩の漫画は見事入選を果たす。

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