“完璧な水柱”冨岡義勇の精神力
かつて義勇は、自分の入隊への経緯に引け目を感じていたことから、自分自身は「水柱にふさわしくない人物だ」と考えていた。だがそんな義勇の思いとは裏腹に、義勇の技の精度、肉体的強さ、判断力、冷静さ、覚悟、どれをとっても「柱」として非の打ち所がない。
義勇の「柱らしさ」はそれ以外でも明らかである。蟲柱・胡蝶しのぶと上弦の鬼との戦況報告を不意に聞かされた時、炭治郎は目に浮かぶ涙を押しとどめるだけで必死だった。しかし、義勇は驚きの表情を浮かべたものの、その動揺を炭治郎に見せることはなかった。
“泣くこと”を許されず、弱音を吐くこともままならず、いつも強く・冷静であらねばならない柱たち。義勇は“完璧な水柱”だといえよう。
猗窩座によって、鬼殺隊の心の誓いでもある「惡鬼滅殺」の文字が刻まれた日輪刀が折られてしまった時ですら、義勇は自分を奮い立たせ、折れた日輪刀を構えてこう叫んだ。
炭治郎を殺したければ
まず俺を倒せ…!!
(冨岡義勇/18巻・第153話「引かれる」)
この段階において、炭治郎の実力は、義勇から「柱に届くと言っても 過言ではない」と称されていたが、それでも炭治郎は義勇に“守られて”いたのだった。そしてこの後、さらに厳しくなる死闘の中で、義勇は壊れゆく炭治郎の身体と精神を救おうと力を尽くす。
育手・鱗滝左近次から「水の呼吸」を教えられた、義勇と炭治郎という2人の兄弟弟子の共闘はまだまだ続く。無限城編・第1章だけでなく、今後の展開からも目を離すことはできない。
《新刊『鬼滅月想譚 ――「鬼滅の刃」無限城戦の宿命論』では、上弦の参・猗窩座の心を動かしたもうひとりの人物、竈門炭治郎についても詳述している。猗窩座との戦いにおける「炭治郎・義勇・煉獄」を比較しながら、読み比べてもらいたい。》
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