
【※ネタバレへの注意】以下の内容には、既刊のコミックスと劇場版のネタバレが含まれます。
新作劇場版「『鬼滅の刃』無限城編 第1章・猗窩座再来」では、主人公である竈門炭治郎の飛躍的な成長が描かれている。『鬼滅の刃』は炭治郎が鬼狩りの剣士になる「立志編」からはじまり、前シリーズ「柱稽古編」に至るまで数多の死闘があった。その時々で炭治郎は見違えるほどに強くなった。しかし、数えきれないほどの鬼がうごめき、異次元の強さを誇る上弦が待ち構えている「無限城」では、水柱・冨岡義勇の助力が必要だった。炭治郎は「柱に届く実力」とも称されるが、猗窩座との戦闘シーンではやはり義勇とは“実力差”がみられる。その差は一体どれほどなのか。新刊「鬼滅月想譚 ――『鬼滅の刃』無限城戦の宿命論」を著した四天王寺大学文学部の植朗子准教授が考察する。
* * *
冷静な剣士、焦る剣士
鬼の始祖・鬼舞辻無惨の策略によって、鬼殺隊の多くが、鬼の根城「無限城」に落とされた。そんな深い深い奈落への道行きに、戸惑いながら落下する者、冷静に対処する者たちがいた。
何だここは…!! 上下左右めちゃくちゃだ
敵の血鬼術(けっきじゅつ)で造られた場所なのか!?
(竈門炭治郎/16巻・第140話「決戦の火蓋を切る」)
「落下の圧で踏ん張りがきかない」と焦る炭治郎の姿もそこにあった。劇場版では、原作であるコミックス版よりも、その混乱ぶりが詳細に描写されており、「柱」である甘露寺蜜璃も伊黒小芭内にかばわれ、最年少柱の時透無一郎も悲鳴嶼行冥にときおりフォローされている様子が見られた。