「弟弟子」をかばう義勇の判断力と経験値

 水柱の冨岡義勇は、あの混乱のさなかにも見事な判断力を見せた。体勢を立て直すことも、技を出して落下の軌道を変えることも、建物をつかむこともできない炭治郎の窮地に、義勇は見事な対処をした。底へと滑り落ちそうになった炭治郎を、片腕でつかんで、すぐ下の階の安全な床へと放り投げることに成功している。

 義勇さんが凄い…

 俺の僅かな動きで 何の技出すか 把握

 その後に自分も技を出して お互いが斬り合わないように動く

 この人やばい

竈門炭治郎/16巻・第140話「決戦の火蓋を切る」)

 着地後、襲いかかる鬼に対処しようとする炭治郎に、義勇は素早く合わせて技をくり出した。あの場に義勇がいなければ、炭治郎は何らかの負傷をしていてもおかしくないような状況だった。

水柱・冨岡義勇のケタ違いの実力

 無限城の混乱が始まったばかりのわずかな時間でさえ、観る者には、冨岡義勇が「水柱」である理由が明確にわかる。

 たくさんの鬼が隠れ、建物自体が状況に応じて形や位置を変えてしまう「無限城」は、単純な走行移動すら危険な場所だった。突如として城が鳴動し始めた時には、義勇は天井位置から猗窩座が現れることを素早く察知していた。

 炭治郎を攻撃する猗窩座の様子を確認しながら、他の「水の呼吸」の剣士では出せないスピードで、滑らかな連続技を見せる。「参ノ型 流流(りゅうりゅう)舞い」「拾壱ノ型 凪(なぎ)」「弐ノ型 水車」の威力、美しさに、敵である猗窩座が「流麗!! 練り上げられた剣技だ 素晴らしい」と思わず叫ぶほどだった。

 炭治郎も、くり返される「十二鬼月」との戦闘で経験を積み、「ヒノカミ神楽」を使いこなせるようになっていたが、技と技の“接続”が義勇ほどは巧みではない。その差は顕著だった。猗窩座にその隙をつかれて攻撃されており、まだこの段階では、義勇のフォローが炭治郎には必要だった。

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