著者は沖縄出身の両親を持ち、大阪で生まれ育った。2000年代初頭の沖縄ブームの火付け役と呼ばれたが、移住20年を迎えた今、「沖縄を離れたい」と言って憚らない。
 観光立県を掲げながら本土以上に再開発を進め、山を切り崩し、海を埋める。ショッピングモールが乱立し、伝統文化や土着の信仰は形骸化した。本土を敵視しながらも、依存し、「沖縄らしさ」を自ら壊していく現実に、著者はもどかしさを隠さない。
 沖縄は表層で語ると叱られ、深入りすると火傷する特殊な場所という。沖縄に戦後70
年の矛盾が詰まっている事実は重いが、本土からの差別や基地への視線は変わらない。
 ある土地の価値は外部の視点からもたらされる。沖縄の変貌に対する理解も必要だろう。絶望からは何も始まらないのだから。

週刊朝日 2017年2月10日号