
当時ソフトバンクにいた選手は、「このシーズンは異様な雰囲気の中でプレーしていました」と振り返る。
「日本ハムは中田翔、レアード、陽岱鋼、西川遥輝、有原航平、増井浩俊と良い選手がそろっていましたが、大谷翔平(現ドジャース)に負けた感覚でした。投打の二刀流でNPB史上初の『10勝、100安打、20本塁打』を達成し、当時の日本人最速の165キロを出しましたが、大谷のパフォーマンスが異次元で、球場の盛り上がりが凄かった。シーズンの終盤になると、大谷が主人公で、こちらがヒールのような感覚でした。1人の選手がチームを変えてしまう感覚を持ったのは、後にも先にも大谷しかいませんね」
激しいCS争いで敷けない「阪神包囲網」
今年も他球団が阪神を逆転する可能性があるだろうか。スポーツ紙記者は、「今年は阪神を追いかける球団がない」と渋い表情を浮かべる。
「現在2位の巨人は岡本和真がケガで長期離脱したことで、得点力不足が課題になっている。今のチーム力を考えると、阪神をひっくり返す爆発力は感じられない。3位のDeNAは打線が看板のチームですが、昨年首位打者のオースティンをケガで欠き、筒香嘉智は打撃不振、宮崎敏郎も陰りが見え始めている。フォード、ビシエドを獲得しましたが、主軸として打ち続けることは考えにくい」
阪神を追う球団に、08年の巨人にあった強力打線、16年の日本ハムにいた大谷に匹敵するような逆転優勝の切り札は見当たらないのだ。
かつては2位以下の球団が、首位を独走するチームにエース級の投手をぶつけるケースもあった。だが、セ・リーグ球団のスコアラーは「今年、阪神包囲網は敷けない」と複雑な表情を浮かべる。
「CSで1つでも上の順位にいきたいからです。2位の巨人から5位の広島まで4.5ゲーム差の間に4球団がひしめいている状況で、力のある投手を阪神戦に先発させる変則ローテーションを敢行する余裕が各球団にない。エースが投げるときは確実に白星を積み重ねたいですから。CSが導入されていない時代だったら、2位も最下位も大きな差がないので、首位を独走するチームを引きずり下ろすために好投手をぶつけることもできましたが、今はCSに進出することも大事なミッションです。阪神の首位独走を『黙認』するのはやむを得ないでしょう」