令和4(2022)年産の政府備蓄米=米倉昭仁撮影
令和4(2022)年産の政府備蓄米=米倉昭仁撮影

グレードを落とした米を補えるか

 ただし、最近は「令和の米騒動」の影響とも思える相談が増えた。「店で使う米の値段を抑えたい。グレードを落としたぶんをお米調理料で補えないか」というものだ。

 米価の高騰は、弁当やおにぎりを製造販売する中食業界や、レストランチェーンなどの外食業界にとって深刻だ。帝国データバンクによると、弁当店の多くが米の高騰ぶんを十分に販売価格に上乗せできず、2024年度は弁当事業を手がける企業の約3割が赤字だという。倒産も過去最多ペースだ。

「スーパーの店頭から米が消えた昨年夏ごろから、お米調理料は中食・外食業界から注目され始め、年明けから引き合いが一気に増えました」と、味の素の担当者は明かす。

「魚沼産コシヒカリ」を高価格米の基準に設定した同社の試験によると、低価格の米は炊き上がりの時点で硬く、粘りも弱い。その差は時間が経つにつれて開いていく。

 けれども、「お米調理料」を投入することによって、安い米の炊き上がり時の品質が向上し、経時劣化も軽減するという。

外国産米を国産に近づけられるか

「外国産米にお米調理料を使って、『どれだけ国産米に近づけられるか』という試験も行っており、『近いところまでいける』という感触を得ています」(同)

「お米調理料」の開発は25年ほど前。以来、改良を重ねてきたが、中食・外食業界向けのいわば「黒衣的な商品」で、今回のような注目を浴びることははじめて。

「お米調理料が評価されるのはありがたくもありますが、立ち行かない店も出てきている、と聞いています。それが心配です」(同)

 食べ比べた記者の家族全員が、米の食感を向上させるお米調理料の真価を実感した。こうした発明が、「米価高騰」に悩む人々を救うのかもしれない。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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