
政府が放出した備蓄米が行き渡って久しい。ただ、味や食感に不満を持つ声もある。いま、中食産業ではお米をふっくら炊き上げる「お米ふっくら調理料」が注目されているという。実力はいかに。
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中食・外食産業で注目
「令和の米騒動」を経て思うことは、米はやっぱり大切だ。今後も、新米は高いままかもしれない。安い備蓄米や外国産米で、たとえば「魚沼産コシヒカリ」と同じような、ウマいご飯が炊けないものか――。
米をふっくら仕上げるとして、中食・外食業界から引っ張りだこの製品があるという。味の素の「お米ふっくら調理料」(以下、お米調理料)だ。炊飯の際に入れて使う。
酵素(アルファグルコシダーゼ)の力が米のでんぷんの保水力を高め、米ならではの粘り感、「おネバ」が増すとともに、ふっくらと炊き上がるという。酵素自体はヒトの唾液などに含まれる、ごくありふれた物質だ。
同社を取材すると、「お米調理料は、備蓄米のような古米に対しても効果があると思います」との答え。さっそく試してみることにした。

「古米臭」は食感以前の問題だった
古米は、味わいがどうしても落ちる傾向がある。
消費者意識データ分析サービス「ノウンズ」が6月上旬に行った「備蓄米に関する意識調査」によると、備蓄米を購入・消費した303人のうち、62%が新米と比べて「味や食感が劣る」と感じた。「変わらない」は37%だった。
「古いお米は、炊いても硬く、舌ざわりがパサついてしまう」と、千葉県船橋市で米店を営む牧野基明さんは言う。米に含まれる水分量が、経年で低下していくからだ。
また、「古米臭」という独特の臭気も発生することがある。保管中、米の粒が少しずつ擦れ合い、表面の「ぬか層」に傷ができる。傷が空気に触れると、ぬか層の脂質が酸化分解される。雑菌やカビの胞子がついて繁殖することもある。これらが古米臭の原因だという。
令和4年産の備蓄米を食べる
記者は近所のスーパーで令和4(2022)年産の備蓄米を購入。新米の食品表示基準に基づくと「古古古米」だ。5キロ1980円(税別)だった。
お米調理料は、「業務用」の製品だが、オンラインショップなどでも購入できる。1キロ入り3000~4000円。袋を開けると、ベーキングパウダーのようだ。
購入した備蓄米を、味の素が教えてくれた2通りの方法で炊飯した。
①通常炊飯:古米3合を砕けないように、やさしく研いだ後、1時間水に浸す。1度水を切り、585ミリリットルの水を投入して炊く。
②お米調理料入り:①と同様に1度水を切った後、水を675ミリリットルに増やし、お米調理料2.25グラム(小さじ半分弱)を投入。撹拌して炊飯する。
さあ、結果はどうだろうか。
