17時58分、最後の打者・柴田勲の左飛を水谷実雄が両手で拝むようにしてキャッチした直後、後楽園のスタンドは「広島の町がそのままやって来たような」大騒ぎとなり、26年目の夢実現に感激したカープファンが次々にグラウンドへ。選手、ファン一体となって、古葉監督を胴上げした。

 39歳の青年監督は「長く苦しい戦いだった」と1年目のシーズンを振り返り、「苦しいときも、選手が僕を引っ張ってくれました。これほど団結の強いチームですから、私は何もやることはありませんでした。団結の勝利です」と選手全員の健闘をたたえた。

 シーズン途中で監督が代わったチームの優勝は、プロ野球の長い歴史の中でも異例の珍事。主力のひとり・大下が「ルーツがいなけりゃできなかった優勝。しかし、ルーツがずっと監督をやっていたら、優勝できなかったかもしれない」と評したように、両監督のどちらが欠けても、おそらく優勝はあり得なかっただろう。

 ルーツ監督が作った米国流のひな型を古葉監督が日本流にアレンジし、チームをひとつにまとめたことが、初の栄冠をもたらしたと言える。

 今季も首位・阪神を追いかけ、7年ぶりのVに燃える広島。初優勝の感激からちょうど50年の節目の年に夢の再現なるか、シーズン終盤まで目が離せそうにない。

(文:久保田龍雄)

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