スマホ時代の選挙戦を改めて振り返ってみて…(写真はイメージ/gettyimages)
スマホ時代の選挙戦を改めて振り返ってみて…(写真はイメージ/gettyimages)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は参院選を通じ、感じたこと、考えたことについて。

【写真】「私を皆さんのお母さんにしてください!」と呼びかけたさや氏

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 参議院選挙後、私のSNSのタイムラインは悔しさの声で埋まっている。参政党の躍進に不安を感じる人たちの声だ。与党大敗とはいうが、共産党もかつてない規模で大敗し、社民党は首の「薄皮」一枚でギリギリ生き延び、立憲民主党は議席を伸ばさなかった。「反自民」で声をあげてきた人たちにとって、目的は叶えたものの、望んだ未来とはかなり遠いところに着地したのだ。

 一方で、今、歓喜や祝福の声に溢れたタイムラインに没入している人は相当数いるはずだ。そのタイムラインは、力強い希望と前向きな闘志に満ちていることだろう。彼らと私のネットの世界は永遠に平行線、まるで私たちは違う国を生きているかのように交わらない。

 SNSの時代、スマホを手放せなくなった時代の選挙戦は、エコーチェンバーによって、より過激になり、より偏るものになることを実感している。私たちはもう既に十分、分断しているのだろう。同じ国にいながら何に没入するかによって、まるでそこは遠く離れた外国のように隔たっているのだ。自分の島にいる時は安心して自分を正しいと感じられるが、一歩外を見れば、違う島の者たちの「あまりに違い過ぎる文化」に互いに嫌悪する。

「参政党をなぜ応援するのですか?」

 そんな街頭インタビューに対し、「(YouTubeの)ショート(動画)がきっかけになった」と語る支持者が多かった。とはいえ、私のスマホで参政党のショートが流れてきたことは一度もない。私のここ数カ月のインスタのタイムラインを正直に言えば、黒と更年期情報ばかり。YouTubeは英語勉強用の動画中心。Facebookはリベラルな友人たちによる政治情報。Xは女性差別と性加害。私のスマホもかなり偏っていて、「私が共感し、理解しやすい情報」に溢れている。参政党のショートが流れてきた人たちには、そもそももう参政党支持に向かう土壌があったということなのだろう。日本の未来に不安を感じ、自民党政権に怒りを感じ、かといって既成野党には心動かされず、「何かを待っていた」人たちだ。

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