出演者の名前が書かれている「まねき」
出演者の名前が書かれている「まねき」

「私、林家たい平の二番弟子で、長男です。なかなか信じてもらえないのはなぜでしょう? 最近気がついたんですが、もしかして、師匠よりイケメンだから?」

 前座のさく平は、とにかく明るく、嫌味がない。イケメンかどうかは知らないが、顔はたい平とはあまりに似ていない。その代わり、声と歯切れの良い口調は父親そっくりだ。

「おとっつぁん、あそこに亀掬いが出てるよ。亀掬い、やろうよ〜」「ダ〜メ。小さい頃、さく平が買った亀、結局、たい平が育ててるんだぞ」

「初天神」の親子のモデルは、たい平とさく平だったのか!
 

 漫才の笑組・ゆたかは、登場するなり、上手桟敷の女児2人に話しかける。

「お嬢ちゃんたち、この先、長い人生だけど、辛いこと、悲しいこと、苦しいことしかありませんから」。相方のかずおが「おい、そういうのは乗り越えるんだろ!」とツッコミを入れると、「まず、僕達を乗り越えないと」。なるほど、そういういうものかもしれない。

 2人は姉妹だろうか、ぼーっと聞いているだけで反応がない。

 笑組の2人は漫才もそこそこに、正月によくやる「南京玉すだれ」を持ち出した。

「これはね、まだ東京の夜空に鵺がいた頃からやってるのよ。さてもめでたい、このすだれ〜」

 変な調子の掛け声につれて、2人が持ったすだれが、「ざる」から「鯛」へと形を変える。一旦も元の形に戻して、今度は「スカイツリー」に変化するーー。という段取りのはずだが、かずおが苦戦していて「これがなかなか戻らない〜」。こういう不揃いが、いかにも寄席の余興らしい。

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