まず注目されるのは日銀の動向です。7月30日〜31日には金融政策決定会合が予定されています。ただし、8月1日には関税交渉の妥結期限が控えているため、今回は利上げが見送られる可能性が高いと考えられます。

 この会合では四半期ごとの「展望レポート」が発表されます。6月の全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)は3.3%と、依然として高い水準です。一方、4月の展望レポートにおける物価見通しは前年度比プラス2.0〜2.3%で、中央値はプラス2.2%となっており、現状のCPIとのギャップを考えると、物価見通しの上方修正が視野に入っていると見られます。

 そうなれば、今後の政策金利の引き上げへの関心も高まっていく可能性があります。その場合、与党による現金給付や、野党が掲げる減税政策など、各政党が示す経済対策と日銀の金融政策との整合性が問われることになるでしょう。

 したがって、日銀の植田和男総裁がどのような発言をするかに、注目が一段と集まると考えています。

価格転嫁に成功している事例も

――今後のマーケットの見通しを教えてください。

 国内政局の不透明感、企業業績への関税の影響の見極めなどで、当面の日経平均株価は4万円を上限に上値の重い展開が続くとみています。

 ただ、こうしたなかでも、好業績の企業はあります。ちょうど2月期の小売業やサービス業の決算が出そろったところですが、これらの企業の業績を見てみると、全体としておおよそ2~3割程度の増益が見込まれており、比較的好調な業績が確認されています。

 背景には、物価の上昇のなかでも価格転嫁がうまく進んでいる点が挙げられます。原材料コストの上昇分を販売価格にしっかりと反映させており、高コスト下でも利益を確保している企業が多く見られます。例えば、米を多く使用する外食産業は、米価の高騰により厳しい状況が想定されていましたが、実際には利益率の高い決算を発表している企業もあり、価格転嫁に成功している事例も確認されています。

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