
罵倒を繰り返す母の「感情のゴミ箱」になってきた54歳の女性。ついに母と距離を取ることを決めた女性の判断に、鴻上尚史さんが「大正解」とエールを送った理由とは。
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【相談263】
「いい娘」でいることに疲れ、母とどのように接するべきかわかりません(54歳 女性 エリザベス)
鴻上尚史様はじめまして。いつも相談を拝読しております。
私は現在54歳で、夫と子供たちに恵まれ、幸せな家庭を築いています。しかし、実の母との関係で、長年心が休まることがありません。
母は現在80歳で、口汚い罵倒や理不尽な要求を繰り返します。私がどんなに真剣に話しても、「私の面倒見たくないから悪態ついてんだろ!」「お父さん(私の父)と一緒!」と、私の心をえぐる言葉で攻撃してきます。挙げ句の果てには、「心療内科に行ったら?」とまで言われます。
父は常に怒る材料を探し、重箱の隅をつつくように私を怒鳴りつけ、ストレスを発散しているような人でした。母は、その父からのDVに長年苦しんできた人です。私は、母が父のせいでNPD(自己愛性パーソナリティ障害)のような言動をするようになってしまった、と信じてきました。もしかしたら、元々NPD 気質があったのかもしれませんが、父のせいで悪化したのだと。
幼い頃、父の目を気にする息が詰まる日々の中、母が時折買ってくれる本が私の唯一の癒やしでした。それらは私にとって、暗闇の中の「光」でした。だから、私はずっと信じていたのです。私が母の「感情のゴミ箱」になることで、いつか母が本来の優しい姿に戻ってくれるのではないか、と。
しかし、先日、美容師さんの一言で目が覚めました。「それでいいんですか?(いつも謝って丸く収めて)お辛いですね」。その瞬間、長年の怒りが込み上げ、母に「汚い言葉遣いをやめて!」「父と一緒と言わないで!」と絶叫してしまいました。それでも母は、「親を非難するのか」「情けない」と、被害者意識をぶつけてくるばかり。もう無理だと悟りました。
私はもう母の感情のゴミ箱になりたくありません。週に一度のLINE発信もやめ、母からのLINEにはスタンプか短文のみ、あるいは既読スルーにしています。もう、「親不孝者」と罵られても構いません。ただ、心の中には「母娘でも言っていいこと悪いことがある」「80過ぎて口汚い言葉を使うな」という怒りや、「自分だけがかわいいくせに、いい母親ぶるんじゃない!」という憤りが渦巻いています。そして、「なぜ、頭が良いはずの母が、矛盾だらけの、つじつまの合わない理論で私を攻撃するのか」という疑問も消えません。
母がもし、認知症になったら、私は決して介護したくありません。弱った母を虐待してしまうかもしれないからです。施設に入れるつもりです。それが、母が度々言う「ボケたらよろしくね」への、私なりのアンサーです。私は母のようになりたくない。父のようにもなりたくない。彼らの負の連鎖を、私で断ち切りたいのです。
鴻上さん、私は母との間に確固たる境界線を引きたいのですが、この私の中にある「過去の光」への未練や、「情けなさ」と、どう向き合えば良いのでしょうか。私はこれから、どうすれば本当の意味で自由になれるのでしょうか。長文となり恐縮ですが、ご助言いただけますと幸いです。