本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能!なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)
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【鴻上さんの答え】

 エリザベスさん。大変でしたね。本当につらい人生を生きてきましたね。

 子供を「母親の感情のゴミ箱」にしてしまう親は、許せないですね。許せないけれど、そうする「毒親」はいますね。子供を産んでも・持っても、大人にならず、ただ年を重ね、子供のまま、親になってしまった人達ですね。

 エリザベスさん。エリザベスさんの文章は「相談」ではないですね。

 エリザベスさんは、もう自分で答えを出していますね。「ご助言いただけますと幸いです」と書かれていますが、僕の助言は、「それでいいと思います」です。

 母親に対して、絶叫したのも正解だと思うし、LINE発信をやめたのも、返信にはスタンプか短文のみ、あるいは既読スルーにしたのも大正解だと思います。

「もう、『親不孝者』と罵られても構いません」と腹をくくったのも正解だし、「施設に入れるつもりです」と決めたのも大正解です。
 

「なぜ、頭が良いはずの母が、矛盾だらけの、つじつまの合わない理論で私を攻撃するのか」と書かれていますが、ずっと「頭が良い」と思っていましたか?

 エリザベスさんが十代後半からやがて成人していく中で、母親の限界というか、「自分勝手さ」は見えてきませんでしたか?

 幼い頃、母親は絶対的な存在です。特に「母と娘」がすべての家族関係の中で最も強力なつながりがあると一般的には言われます。(ちなみに、次が「母と息子」で、最も距離が遠いのが「父と娘」です)

 ですから、「頭が良い」という印象は、エリザベスさんが子供の頃に作られたものではないですか?

 エリザベスさんが大人になって、母親の限界が見えてくるのは、とても当たり前のことだと思います。

「『過去の光』への未練や、『情けなさ』と、どう向き合えば良いのでしょうか」と書かれていますが、幼い頃には、「希望の光」だった、でも、大人になってからは、「私を苦しめる根本原因」だと分かったということだと思います。
 

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