
初めて作った料理、チキンステーキを母親に振る舞ってから、料理に楽しさに目覚めたリュウジさん。その後ハマったのは、パスタだったと言います。自身の料理哲学を語った最新刊『孤独の台所』(朝日新聞出版)より、一部を抜粋してお届けします。
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俺は一気に料理にのめり込みました。
最初にハマったのはパスタです。
単に好きだったというのもあるし、チキンステーキのレシピのように、イタリアンのシェフが更新しているサイトを巡回していたことも大きかった。
ペペロンチーノのようなオイルベースに具を足したもの、トマトソースベース、カルボナーラなどのクリーム系パスタ……いろいろと紹介されていたので、片っ端から再現して食べていきました。
ちゃんとレシピ通りに作ってみると、さすがはプロのレシピでおいしい。
そして何度も繰り返していると、次第にいちいちレシピを確認しなくても料理ができるようになる。さらにおいしく、手際よく作れるようになります。
好きなものを継続していると、新しいレシピでもぱっと眺めるだけで、これはこういう味なんだろうなとなんとなくイメージできるようになってきます。
一気にレパートリーが広がった
そうなると組み合わせの楽しさに目覚めます。
トマトソースベースで使っていた具材をオイルベースに変えてみたらどうか。トマトソースにちょっと隠し味を加えてみよう。辛味を足したら、和風に切り替えてみたら……一度レシピをマスターすれば、アレンジもできるようになってくるわけです。
このパスタに別の具材を入れたらうまいんじゃないか、あれもいいなこれもいいなとやっているうちに、一気にレパートリーが広がりました。
パスタはアレンジがしやすい料理です。ベーコンやウインナー、ひき肉を入れてもいいし、野菜を入れても味わいはしっかり決まる。一食でいろんな栄養をまとめて一皿にできるから、よく作っていました。
これが家庭料理の練習期間でもありました。
作ったら、もちろん母親にも食べてもらう。レシピをアレンジするようになってから、だんだん料理は俺が担当することが増えていきました。
そこにもう一つの転機が重なってきます。火事のときに電話をかけてくれた友達から、世界一周旅行に誘われたのです。
(リュウジ・著『孤独の台所』から一部を抜粋)
