
圏外だった「国民・奥村」が猛追
奥村氏から追われる立場の武見陣営も懸命だ。当選5回、23年には厚生労働大臣として初入閣も果たした。現在は自民党の参議院議員会長を務め、「次期参議院議長候補」との呼び声もある。
武見氏自身はこう話す。
「参院議員会長として2議席守るのを使命としていますが、私自身が非常に厳しい状況です。(自民党が大敗し、自身も落選した)2007年の逆風と同じような強いストレスが国民のなかにある。活力ある健康長寿社会をつくるなかで、国民の皆さん方のストレスを解消し、若い世代の人たちの生活基盤を強化していきます」
また、参政党の勢いについて問われると、「ストレスのはけ口になっている」として、こう話した。
「理論的な話ではなくて、理屈を抜きにした感情の高まりだと思う。一体どういう具体的政策を持っているのかが全くわからないにもかかわらず、人気だけが高まっているという現象が政治的ストレスの表れであって、これは極めてわが国にとっても危険な兆候だと思います」
武見氏は17日には総決起大会として、ホテルニューオータニでの大集会も予定している。小池百合子東京都知事、麻生太郎元首相、岸田文雄前首相も来場する見込みだ。
一方、新人2人が挑む国民民主党には勢いがある。元アナウンサーの牛田茉友氏(40)が高い知名度を武器に接戦から抜け出しつつあるほか、序盤情勢では圏外だった奥村祥大氏(31)がここへきて猛追。現在9番手とみられ、当選圏を視界にとらえつつある情勢なのだ。陣営で選対本部長を務める森洋介衆議院議員は語る。
「箸にも棒にもかからないところからここまで来ました。小さな駅でも何人も見に来てくれて、期待が高まっている手応えはあります。(牛田氏との票割りなどについては)2議席獲得が絶対目標で、それぞれの陣営が自主的に輪を広げていくことしか勝ち目はないですから、全力でやっていきます」
奥村氏の猛追劇を支えるのが、街頭での活動量だ。選挙戦中178回の街頭演説を目標に、連日10回ほどの演説をこなす。奥村氏は言う。
「178回というのは『年収の壁』引き上げのわれわれの目標とかけているんですけれど、まずは街頭に出て自分の声で伝える、あとは街の皆さんの声を直接聞いてそれを永田町に持って行きたいという思いです」
猛暑が続いた選挙戦前半から一転、この取材をした15、16日には東京各地で断続的に大雨が降り、強風も吹いた。あと数日、風をつかむのは誰か。嵐の東京選挙区から、最後まで目が離せない。
(AERA編集部・川口穣)
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東京選挙区ではこのほか、れいわの山本譲司氏、無所属の吉永藍氏、無所属の土居賢真氏、諸派の藤川広明氏、社民の西美友加氏、保守の小坂英二氏、諸派の峰島侑也氏、諸派の酒井智浩氏、諸派の福村康広氏、諸派の桑島康文氏、諸派の渋谷莉孔氏、諸派の吉田綾氏、無所属の吉沢恵理氏、諸派の市川たけしま氏、維新の音喜多駿氏、無所属の平野雨龍氏、無所属の山尾志桜里氏、諸派の千葉均氏、無所属の増田昇氏、諸派の辻健太郎氏、諸派の早川幹夫氏、諸派の石丸幸人氏、無所属の高橋健司氏が立候補している。
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