リュウジ・著『孤独の台所』(朝日新聞出版)
リュウジ・著『孤独の台所』(朝日新聞出版)

「うま味」にこだわる深い理由

 もしかしたら過去にはあったのかもしれないけど、当時売れていたレシピ本のなかに、ここまでうま味調味料や顆粒コンソメを使ってうま味を重視したものはありませんでした。

 なぜうま味を重視するのか。

 SNSのユーザーにしても、本を手に取ってくれた読者にしても、俺を入り口に料理の世界を知ってもらうためです。

 そのためには、みんなに馴染みがあるコンビニのお弁当やファミリーレストランの料理と同じように、最初の一口、もっといえば味見の瞬間から「あっ、うまい」と思ってもらえるようにしなければいけない。

 しかも、料理は簡単であれば簡単であるほどいい。

 俺自身は別に、料理はうま味がはっきりと強くなければダメだと思うタイプではありません。

 でも、レシピは再現したいと思ってくれるすべての人のものです。手っ取り早く料理をおいしくするポイントは、うま味と香りです。

 たとえば俺は、かつお節や削り節をよく使っていますが、あれはうま味を補充するというより、香りを足すという意味合いが強い。

 ごま油やオリーブオイルも同じ。ちょっと回しかけると一気に香りが引き立ちます。

 そうやって一口目のインパクトがあると「これはおいしいぞ」と思うわけです。料理を作った人も「ああよかった。ちゃんとおいしいものが作れた」という自信を持つことで、次につながっていく。

 その第一歩が『バズレシピ』だったのです。

(リュウジ・著『孤独の台所』から一部を抜粋)

孤独の台所
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