外国人と生活保護に関する投稿はSNS上にあふれている。「外国人に盗(と)られている生活保護」「外国人生活保護やめろ」といったネット動画は何百万回も再生されている。男性は言う。
「そういう人たちばかりじゃないんだろうけど、そういう情報のほうが頭に残りやすいんですよね。日本人の親方のもとで、すごく教育が行き届いている外国人もたくさん見てきましたから。そういう現場だけを見ていれば、外国人材の活用は素晴らしいことだって思えるんでしょうけど……」
SNSには「生活保護を受給している世帯の3分の1は外国人」などとする誤情報も拡散している。厚生労働省によると、23年度に生活保護を受給した世帯のうち、外国籍の人が世帯主のケースは2.9%。ただ、それを多いと見るか少ないと見るかは人によって異なるだろう。
筆者も偉そうなことは言えない。せわしなく仕事や生活をしている日常の空間に、キャラクターの着ぐるみを被った外国人観光客がゴーカートに乗ってはしゃぐ姿に出くわすと、正直気持ちがざわつく。貧しくても豊かでも、住人であろうと観光客であろうと、自分たちの暮らしがこれほど切羽詰まっているのに、「よそ者」に我が物顔で荒らされているような不快とでも言うのか……。
東京で暮らしていると訪日外国人の多さに加え、コンビニでも飲食店でも工事現場でも外国人の働き手を見ない日はない。コールセンターに問い合わせした際も、最近は明らかに日本人ではないアクセントの人が対応しているのが受話器越しに伝わる。「日本人が敬遠しがちな職場を担うのが外国人」という印象が定着した感も否めない。ただ、コールセンター業務は近くAIが代替するとも言われている。急場をしのげば都合よく切り捨てる、ということにならないか。だとすれば、それこそ「日本人ファースト」に他ならない。
今回の参院選でよく聞くようになった、この「日本人ファースト」という政治スローガン。男性はどう受け止めているのか。「これも一長一短あると思います」と言った後、男性は強い口調でこう訴えた。
「でも『日本人ファースト』なんて言い出したら、日本から出て行ってしまう外国人が増えると思いますよ。日本の物価はどんどん上がってて、日本人は『暮らしにくい』と文句を言ってますけど、低賃金で生活をつないでいる外国人はその比じゃないですから。この人たちが円安の日本を捨ててもっと稼げる国に出て行くと、日本はめちゃくちゃ失うものが大きいと思いますけどね」
(AERA編集部 渡辺豪)
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