工場で働く外国人労働者(写真はイメージ)
工場で働く外国人労働者(写真はイメージ)
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 20日投開票の参院選で「外国人政策」が論点に浮上している。外国人への対応の厳格化や受け入れ規制などを打ち出す政党も。人口減少と高齢化が加速し、「経済のパイ」も小さくなる日本で、外国人とどう向き合えばいいのか。

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 「人手不足で高齢化もすごく進んでいます。外国人がいないと困る、というのは分かっているんですが……」

 外国人材に対して複雑な心情を吐露するのは、首都圏の中堅の内装業者で現場監督として働く30代男性だ。

 男性とは10年ほど前に知り合った。その時は別の仕事をしていたが、何度か転職して現在の職に落ち着いた。今は小さな子もいる家庭を築いている。帰宅している時間帯を見計らって電話すると、男性は背後で泣きわめく子どもの声が届かない場所に移動して、業界の実情を聞かせてくれた。

 「元請けの立場で言うと、やっぱり日本人と仕事をするほうが安心できます。少なくとも親方は日本人でないと、意思疎通とマナーの面から発注をためらいますね」

 とはいえ、下請け先として発注する協力業者の中には、外国人のほうが多い業者も珍しくないという。

 「率直に言うと、人件費がめちゃくちゃ安いんですよ。うちが依頼した人件費から2~3割はピンハネされていると聞きました。寮で共同生活し、1日1万円前後で働いているようです。日本人しかいない業者よりも外国人が多い業者のほうが利益率はかなり高いのが実情です」

 元請け業者はピンハネを承知で、そうした下請け業者を重宝している面も否めないと男性は明かす。

 「工期に余裕がない現場ほど、最初に声をかけるのは外国人が多い業者です。そういう業者のほうが労働関連法などの順法精神に乏しく、工期短縮の無理も利くからです。人件費や資材の高騰も深刻ですから、このままだと価格競争で日本人主体の業者は戦えなくなっていくと思います」

 日本人しかいない男性の会社の場合、職人は60~70代と高齢化が顕著だという。建設業界の現場では日本人だと40代でも「若手」と呼ばれるが、外国人の働き手はほとんどが20代。一方、日本人の20代の働き手を確保するのは相当厳しいのが現実だ。

 「僕の知り合いにもいますが、以前なら地元の『ヤンキー』のコミュニティーを通じてグループごとスカウトするルートがありましたが、今はそういう時代じゃないですから。きつい仕事だという業界のイメージもあって敬遠されるのも無理はないと思います。あと10年、15年先を思うと、この業界は全く不透明です」

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