東京商工リサーチが今月発表した2025年上半期(1~6月)の全国の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年同期比1.2%増の4990件。増えているのは人手不足が原因の倒産で、上半期として過去最多の172件に上った。人手不足倒産の主な理由に挙げられるのが従業員の退職(54件)や補充などに伴う求人難(68件)、人件費高騰(50件)。いずれも過去最多を更新した。経営難の中小企業は賃上げなど従業員の待遇改善が進められず人手が集まらないのが実情だ。

 男性によると、建設関連業の中で外国人の比率の高さが目立つのは解体業者だという。

 「安く買いたたくことができる業者を探すと、クルド人などの外国人が中心の業者に行き着くんだと思います」

 その上で、男性はこう続けた。

 「クルドの人たちは解体現場で不可欠の労働力です。にもかかわらず、ネットの書き込みでは悪い面しか書かれていませんよね」

 ふと、筆者の学生時代の記憶がよみがえった。1990年前後、大阪の「釜ケ崎」で日雇いの解体作業のアルバイトをしていた。手配師が運転するワゴンに押し込められ、アスベストを含む粉塵が巻き上がる現場で終日働いて1万2500円。現地解散だが、交通費は支給されない。ピンハネも、社員と日雇いの序列も、暴力もあったが、そこに外国人はほぼいなかった。もちろんネットもなく、言いたいことはたいてい面と向かって言った。差別もハラスメントもひどかったが、ヘイトスピーチが社会に蔓延することはなかった。

 男性は外国人材に同情を寄せているのかと思ったが、そう単純でもないようだ。参院選で「外国人に頼らない国づくり」といったスローガンを掲げる政党があることをどう思うか尋ねると、男性は「うーん」と唸った。

 「本当にムズいと思うんですよ」

 何が「ムズい」のか。「外国人に頼らない」という言葉には心を揺さぶられるが、現実は逆に進むのではないか、と男性は危惧しているからだ。そして、外国人に対するこんな不信も口にした。

 「だってメディアでピックアップされるのは、外国人が悪いことしてるニュースばかりじゃないですか。僕が最近見ていて、『嫌だな』って思ったのが生活保護関連です。日本に来てすぐに申請する外国人が多いとかいう話を聞くとウンザリします。生活保護は必要な制度ですが、受給には一定のラインを設けてもらわないと、悪い人ばかりが得する社会になってしまいます」

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