
同塾の受け入れ対象は2~18歳だが、2歳から受講させる中国人が多い。背景には、インターナショナルスクールは低年齢ほど入りやすい事情があるという。
「インターナショナルスクールは日本でも人気が高まり、近年は幼稚園から高校までの教育を行う学校が増えましたが、定員に空きが出ない限り中途編入は年々難しくなっています。このため、最年少クラスの3歳児の段階で確実に入学させたいと考える保護者が増えています」(斎藤代表)
中国の保護者はこうした内情を把握したうえで、2歳児の受験戦略に注力しているのだ。中には、2歳児に週6日のオンライン講義を申し込んだ中国在住の親もいるという。
とはいえ同塾では通常、2歳児にオンラインレッスンは推奨していない。一コマ90分の講義の間、2歳児をずっと画面の前に座らせるのは難しいからだ。それでも保護者のたっての希望を受け、斎藤代表は「子どもが画面に集中できるよう、傍らで常に見守る大人を家庭で確保できるのであれば」と条件つきでゴーサインを出した。
「そうすると、どの家庭でもベビーシッターのような方がそばにつく形で2歳児もオンライン受講するスタイルが定着したんです。そんな方は日本ではこれまで皆無でしたが、中国ではごく普通になりました」(同)
ではなぜ、中国人富裕層は日本のインターナショナルスクールに子どもを進学させたいと考えるのか。理由は一つではない、と斎藤代表は言う。
「最も大きな理由は、中国よりも日本の生活水準が高いからだと思います。衣食住の環境や治安の良さも含め、子どもの教育環境としてすぐれているという判断があります」
もう一つは学費だ。日本のインターナショナルスクールの多くは、学費が年250万~300万円だが、中国では安いところでもその倍はかかるという。
中国人保護者に共通するのはハイスペック人材が多いこと。経営・管理ビザを取得し、多様なビジネスを展開している40歳前後の働き盛りの世代が主だという。
「みなさん、中国語と日本語と英語がぺらぺらのトライリンガルです。うちの授業料は日本の大手進学塾よりも高めに設定していますが、かなりの確率で中国人の方は『安いっ!』と驚かれます」(斎藤代表)
中国人の生徒が目指すのは、ほとんどが欧州のトップ大学進学だという。
「最近は米国の大学はあまり人気がなく、欧州、特に英国の名門大学に人気が集中しています。そのために必須の英語力を身につけるステップとして、教育力の高い日本のインターナショナルスクールが選ばれています」(同)
今後さらに中国人の生徒が増えると見込む斎藤代表は、こんな方針も示した。
「じつは中国進出も検討しています」
(AERA編集部 渡辺豪)
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