都内のインターナショナルスクール受験生向け学習塾「EGCIS」で学ぶ子どもたち。近年は中国人移住者の生徒も交じる(EGCIS提供)
都内のインターナショナルスクール受験生向け学習塾「EGCIS」で学ぶ子どもたち。近年は中国人移住者の生徒も交じる(EGCIS提供)
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 中国人富裕層の日本移住が進んでいる。とりわけ注目されるのは、子どもの教育環境を重視する「教育移住」で、インターナショナルスクール受験向けの日本の学習塾には中国人からの問い合わせが相次いでいる。実態はどうなっているのか。

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 中国の都市部を中心とする教育熱は高まるばかり。このため富裕層の中には、競争が激しい中国国内で子どもに過度なストレスがかかるのを避け、家族で海外に「教育移住」するケースも増えているという。

 そんななか注目を集めているのが、日本のインターナショナルスクールだ。

 「中国人向け、ましてや中国在住の中国人に向けて広告やPRをしたことは全くありません。ですから、『なぜ』という戸惑いのほうが大きかったですね」

 こう振り返るのは、都内3カ所でインターナショナルスクール在校生・受験生向け学習塾を展開する「EGCIS」(東京都目黒区)の斎藤幸代表だ。

 始まりは1本のLINEの問い合わせだった。

 「いまは中国に住んでいますが、近く日本に移住して子どもを東京のインターナショナルスクールに通わせたい、と考えています」

 中国人の保護者が流ちょうな日本語でオンライン指導の相談を寄せたのが5年前。以降、中国人からの問い合わせが相次ぐようになったという。

 インターナショナルスクール専門の学習塾は日本でも珍しい。中国在住の中国人がどうやって、東京で「インター・海外校への入学・編入」から「海外・国内トップ大学への入学」までのサポートをうたう同塾の存在を知ったのか。

 斎藤代表によると、数千人が登録する中国人コミュニティーのLINEグループがあり、そこでメンバーの一人が「EGCIS」を好意的に紹介したのがきっかけのようだ。転機はコロナ禍だったという。

 「コロナ禍で中国政府はロックダウンを敢行しましたが、その際、中国のインターナショナルスクールに勤務していた欧米国籍の教員がこぞって帰国したため、多くの学校が麻痺状態に陥ったそうです。このことが中国人保護者の不信感を招き、日本のインターナショナルスクールを視野に入れる保護者が増えたと聞いています」(斎藤代表)

 同塾の中国人は現在、中国本土で受験生向けプログラムをオンライン受講している5人を含め15人。これは生徒全体の2割に当たるという。10人は日本移住後、日本のインターナショナルスクールに通いながら在校生向けプログラムを受講している。斎藤代表は言う。

 「日本移住の前に、中国で子どもにオンライン受講させ、家族で日本移住後、意中のインターナショナルスクールの合格を勝ち取って入学する、というパターンが急増しています」

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