そのショーを見て、号泣した――。JUNKOさんの物語(写真はイメージ/ gettyimages)
そのショーを見て、号泣した――。JUNKOさんの物語(写真はイメージ/ gettyimages)
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 女性たちは、いま、何を考え、感じ、何と向き合っているのか――。50代のJUNKOさんはなぜ公務員を辞して、緊縛画の世界に飛び込んだのか。女性の半生を聞いた。

【写真】ショーに号泣したというJUNKOさんとJUNKOさんの作品

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園長のパワハラに耐えかねて

 長らく公務員として働いていたJUNKOさん(50代)は、3年前に早期退職して「緊縛画」を描き始めた。緊縛画とはつまり、縄で縛られた女性の絵のことだ。

 その日、鮮やかな着物姿で現れたJUNKOさんは、深紅の羽織にベルベット地の帯を締め、目を惹く華やかさがあった。それでいて、どこかのほほんとした雰囲気を漂わせている。意外な転身の背景には、何があったのだろう。

「保育園で事務職をしていたんですが、園長のパワハラに耐えている保育士さんが多くて。皆さんの話を聞いているうちに、自分もパワハラされていることに気が付いてしまい、ちょっと病み始めてきているところに、老眼もひどくなってきたんです。50歳を目前にしたころですね」

10年後の目は違うぞ

 JUNKOさんは、そこでハッと自分のやりたいことについて考えたという。

「『自分は絵を描きたかったじゃん』って思ったんです。それまでは、定年後にゆっくり描けばいいやと思っていたんですよ。だけど、60歳を過ぎたら、今せっかく描けている細かい絵が描けないかもしれない。今と10年後の目は違うぞって思ったら、公務員をやってる場合じゃないだろ、みたいな」

 子どものころから絵を描くことが好きだったJUNKOさんは、仕事を辞めて本格的に描き始めた。

なんて美しい世界なんだろう

 なぜ、緊縛画だったのだろう。

「あるイベントのなかに緊縛体験コーナーがあって、知り合いの子が体験する際に動画撮影を頼まれたんです。それがすごく綺麗に撮れてしまって。以来ずっと、緊縛が気になっていたんです」

 それから4年後の2023年、JUNKOさんは、自分の気持ちを確認するため、改めて緊縛ショーを見に行ったという。

「『なんて美しい世界なんだろう』って、感動して号泣しちゃったんです。全身で責めを受け入れる女性たちも、縛り手さんも、お互いのことを本当によく気遣っている。それに、縄が解かれるときの、終わってしまう切なさ。いろいろな感情を全部ひっくるめて、受け手の女性がとても綺麗なんです。この綺麗な世界を自分で描きたいと思ったんですね」

 JUNKOさんは、縄好きが集まるサロンや緊縛ショーを訪問し、作品を描き始めた。今年2月には初の個展を開いている。

 ファイルに綴じられた作品をいくつか見せてもらったが、髪の毛一本一本のなめらかな動きや、縄の繊細な質感まで丹念に表現されており、余韻の残る美しい作品だった。

 そんなJUNKOさんには、一卵性双生児の姉がいる。

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