2024年のキャッシュレス決済の比率は42.8%に達し、政府が掲げる「4割」の目標を超えた。将来的には「8割」を目指すとしている。利用者にとっては便利な一方で、店舗側の負担は増えそうだ。
一方、アメリカの一部の州などでは数年前から「キャッシュレス専用店を禁じる法律」が施行されている。
「この法律は、現金での支払いを拒否し、クレジットカードなどに限定することを禁じる内容で、州や市が現金とキャッシュレスの両方を受け入れるよう定めています。アメリカには、不法移民など銀行口座を持てない人が多く、現金で生活せざるを得ない事情があるのです。つまり、現金が使えないキャッシュレス専用の店は、『低所得者は来るな』という、差別的な印象を与えてしまう場合もあるのです」(川野さん、以下同)
日本でも、自己破産をした人や銀行口座を持たない人など、キャッシュレスに対応することが難しい層もいる。
社会をより公平にする手助けに
川野さんは、キャッシュレス決済について、買い物の手段だけでなく、社会問題を解決する手段としての活用も勧める。
「キャッシュレス決済は、“ビジネスの問題”と見られがちですが、私はむしろ“社会的な課題”と考えています。例えば、病院や避難所などでキャッシュレスを活用することで、必要な支援が届かない人を減らすことができます。決済とデータの連係が、社会をより公平にする手助けになるのです。社会課題の解決には多くの人の協力が必要です」
東京大学病院では「ゆーとむカード』というメンバーシップカードが導入されているという。
「これは診療費が『ゆーとむカード』のクレジットカード払いとして翌月に引き落とされ、診察が終わればそのまま帰ることができる仕組みです。東大病院のような大規模な施設では、会計のために40分近く待たされることもありますが、このカードを使えば待ち時間が不要になります。利用者も徐々に増えています」