
石破茂首相が到着する直前のことだった。
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「運のいいことに、能登で地震があったでしょ」
こんな失言どころか「暴言」を発したのは、和歌山選出の自民党・鶴保庸介参議院予算委員長だ。
7月8日、石破首相は安倍晋三元首相の3回忌のため奈良市内で追悼の花をたむけ、和歌山に向かっていた。参院選・和歌山選挙区の自民候補、二階伸康氏の応援のためだ。
その“前座”として和歌山市内の会場でスピーチに立ったのが鶴保氏。石破首相の取材のために多くのメディアが集まっている場所での失言だったため、たちどころにニュースになった。
「とんでもないことをやらかした。これで二階氏の当選はかなり厳しくなった」
そう言って、自民党の和歌山県議A氏は天を仰いだ。
「なんだっけ、能登半島の北のほう」
鶴保氏はこの日、都市と地方に拠点を置く「二地域居住」を促進する話のなかで、「運のいいこと」と発言した。
「金沢にいても輪島の住民票が取れるようになっていったんですよ。やればできるんじゃないかと私は思いました。チャンスです」
などと続けている。ただ、鶴保氏はほかにも、被災地への関心の薄さを示す発言を繰り返していた。
「能登で地震があった時、地震の上のほうであったのは、あの輪島だとか、あの…たま…なんだっけ、上のほうね、能登半島の北のほう……」
おそらく石川県輪島市の北東にあり、甚大な被害があった珠洲(すず)市のことを言おうとしたとみられるが、地名が出てこない。現場にいたA氏は、こう話す。
「珠洲市のことを言おうとしているのは明らかでした。『鶴保、珠洲市のことも知らんのか』『能登半島の地名も勉強せずに石破首相の前で話そうとするんか』と小声で苦言を呈する自民党支援者もいました」
鶴保氏はこうも発言した。
「被災者は、金沢に(避難して)住んで、いちいち自分の被災した家をですね、点検しにいくような作業をずっとしておられた。輪島市の市役所もないのに、金沢市に住んで、新しい被災事業の補助金もらうのに自分の住民票をいちいち、市役所がまともに動いてもいないところにですね、3時間かけていくのはおかしいじゃないか」
避難した住民に不便な面はあったかもしれない。だが、この発言を聞いて、輪島市役所近くで店を構えていた自営業者の男性は憤る。
「輪島市役所はありました。きちんと動いていた。電気も水も十分じゃない中で、職員は懸命にやっていた。そりゃすぐに住民票はとれなかったかもしれないが、輪島市の職員を冒涜する発言は看過できない」