「お店、出したいですね。味や雰囲気などの実力で勝負したいので、僕の名前は一切出さずに。」撮影・松永卓也/朝日新聞出版写真映像部)
「お店、出したいですね。味や雰囲気などの実力で勝負したいので、僕の名前は一切出さずに。」撮影・松永卓也/朝日新聞出版写真映像部)

 日本に料理研究家は多くいるが、レシピに「味の素」と書く料理研究家は少ない。

「ある料理研究家に、レシピに味の素を使わない理由を聞いたことがあります。『イメージが悪いからです』が答えでした。

 その人はうま味調味料が入っている鶏がらスープのもとも顆粒コンソメも麺つゆも使うのに。

 そもそもイメージが悪いって本質じゃないですよね。じゃあ誰が正しいことを伝えるんですか」

 リュウジさんの「味の素愛」がすごい。

強気の理由

 だが、味の素を発明した味の素社にも「違う」と思うことははっきり言う。

 先ほど紹介した「味の素本」では化学調味料という言葉を使った。味の素社が好まないことはわかっていたのだが。

「正しい情報を伝えるには、身を切る痛みも必要だと思うから。味の素は大企業だから身を切りたくないでしょう。

 でも『化学調味料』という表現から逃げたら読者に伝わらないと思った」

 ここまで強気に出られるのは、「本で味の素からお金もらってないから」。

 リュウジさんは、味の素こそ「日本が誇る世紀の大発明」だと力説する。漠然とした感覚だった「うま味」が白い結晶となって形を得たことで、1振りするだけで手軽に料理の味がレベルアップする。

「自分の料理に合うから、これからも推していく。お金なんていらないから、言いたいことはちゃんと言わせてほしい」

 聞いているだけでスッキリする。

リュウジさんの最新刊『孤独の台所』(朝日新聞出版/1540円・税込み)
リュウジさんの最新刊『孤独の台所』(朝日新聞出版/1540円・税込み)

 インフルエンサーのリュウジさんはPRの仕事についても明確なポリシーがある。

「普通のPR動画といえば、お金をもらっているから商品を褒めまくる。ただそれだけの動画も多いです。

 僕はPRする商品を使ってレシピを作ります。新商品に僕のエッセンスを入れて新しいものを作る。味はおいしい。それが結果的にPRになる」

 たいしていいと思っていないのに、お金をもらっているから褒めているんだろうと思い、PR動画を嫌う人も多い。

 リュウジさんの場合、PRであっても「おいしいレシピのお役立ち情報」になっているので、視聴者に受け入れられる。

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