区長室で。スカーフは、多彩な色使いで未来の品川の姿を表現したブランドアートをデザインしたもの(撮影/倉田貴志)
区長室で。スカーフは、多彩な色使いで未来の品川の姿を表現したブランドアートをデザインしたもの(撮影/倉田貴志)
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 品川区長、森澤恭子。公務が終わればスーパーへ。保護者会にも参加する。東海道の要所として栄えた東京・品川の新しいリーダーは、職を転々とし、子育てで再就職の壁に阻まれ、多くの女性たちが経験したであろう悔しさを噛みしめた末に、政治家という「天職」を得た。「弱者を救うのではなく弱者を生まない社会のしくみを」。目指すのはそんな政治だ。

【写真】テレビの討論番組にゲストに招かれた品川区長・森澤さん

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「うんうん」「えー、そうなんだ」「それは何とかしたいね」

 6月初旬、東京・品川区長の森澤恭子(もりさわきょうこ・46)と中堅職員4人が、区長室のソファで昼食を囲みながら意見交換をしていた。月2回ペースで開かれる職員との「ランチミーティング」で希望者は誰でも参加できる。実際の上司より若いかもしれない森澤とのやり取りは、ざっくばらんな本音ベース、友人同士のランチタイムのようだ。検討を約束すると森澤は、案件をすぐに事務方に卸すのが常。

「溜め込まないんです。フィードバックがあれば、また考えればいいので」

 ビジョンと方向性、白黒をつけない「第三の道」も示し、最終的に決断する。そのスピード感は権限の大きい区長だからこそ出来ること。都議会議員の2期目半ばで区長に転じた森澤には、行政のチェック機能を求められる議員より、実際に施策を動かせる首長の方が性に合っているようだ。

「職員や周囲の皆さんには凄く支えてもらっています」

 品川区長としてメディアでメッセージを発していくことも大事な仕事の一つ。同じ頃には、TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)の討論番組「堀潤激論サミット」に出演。テーマは「防災力強化と地域連携」で、首都直下型地震がいつ起きてもおかしくない東京では最重要課題の一つでもある。森澤は「区防災課の職員が現場の協議に入ることで、行政がハブの役割を果たしたい」と訴えた。

 番組のホストでジャーナリストの堀潤は「持続可能な『合意形成』の形が品川から生まれたら」と期待する。

「森澤さんは現場主義。メディア出身というフットワークの軽さから、世間や社会が今、何を求めているかというニーズを把握し、(品川区が)声を拾う『装置』としてマスメディア的な政治を地でやっている印象がある」

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