テレビの討論番組でゲストに招かれ、施策を話す姿は、そのままニュースキャスターになっても良さそうなほど明瞭だ(撮影/倉田貴志)
テレビの討論番組でゲストに招かれ、施策を話す姿は、そのままニュースキャスターになっても良さそうなほど明瞭だ(撮影/倉田貴志)

何事も超ポジティブ思考 「もしかして区長さん?」

 6月中旬の日曜日、品川区内在住・在学の中学・高校生ら10代が自由な発想で区長に政策提言をする「リバースメンター」10名の委嘱式が大崎の区の施設で行われた。「『こども選挙』を行い、政治への関心を高め、投票率9割を超える社会を目指したい」等、10代の柔軟な発想からの提案が相次いだ。9月に予定する区長へのプレゼンテーションまでに、専門家や区の職員のサポートを経て内容を磨く。「みなさんに期待しています」と挨拶し、メンバーたちと「ガンバロー」とこぶしを振り上げた森澤は、区長としてと同時に、同世代の子どもを持つ、母親のような気持ちでエールを送っていたのだろう。

 白やブルーといった明るい色のパンツスーツを颯爽と着こなし、「太陽のように明るい」と言われる笑顔や話しぶりはテレビ局の報道記者出身の経歴ゆえか。スッと立つ姿勢の良さは幼少時にたしなんだクラシックバレエの賜物という。何事も「なるようになる」と超ポジティブ思考。いずれにしても世間一般にある区長のイメージをいい意味で裏切る。区長といえば区役所職員のゴール、おじさんの名誉職、東京23区の行政はどこも同じ、といった印象が一般的かもしれない。実際、品川区役所に並ぶ歴代区長の写真は重厚な名士ばかりである。「突然変異」のような森澤だが、引退した前区長の施政の継承と発展を訴えての立候補、就任でもあった。

 東京・品川は東海道の要所として栄え、今も産業と交通の拠点、人口は6月1日時点で41万人と増加傾向にあり、新旧の区民が住み、区外から区内の企業への通勤客も多い。そんな大都市で、コロナ禍を経て、新しいリーダーを期待する時代の要請にピタリとはまったのだ。

 例えば森澤は、政治活動において必須とされている駅での「辻立ち」は、早朝、遅い夜間帯は行わない。小学生と中学生の2人の姉弟の「子育て真っ最中の母親に深夜早朝は無理です」。公務が早く終わればスーパーマーケットに寄って食材を選び帰宅して夕飯を作る。学校の保護者会にも参加する。「保護者としては戸籍名(森澤は旧姓)ですが『もしかして区長さん?』とバレたこともあります(笑)」。夫や母のサポートあってこその生活、そんな日常から感じる課題を施策に生かしていく。

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