沖縄の米軍嘉手納基地。日本は「核の傘」の国であるはずだが、逆に標的になる可能性が高まっている
沖縄の米軍嘉手納基地。日本は「核の傘」の国であるはずだが、逆に標的になる可能性が高まっている
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 世界各地で勃発する軍事紛争から、核兵器が使用されるリスクが高まっている。現役核弾頭数も増加傾向にある。背景に何があるのか。AERA 2025年7月14日号より。

【グラフ】現役核弾頭数の国別推移

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 イスラエルによるイラン攻撃に続き、米国もイランの核施設攻撃に踏み切った。5月には、核保有国であるインドとパキスタンの軍事衝突も起きた。世界各地で勃発する軍事紛争が不安をあおり、核軍拡競争の再燃が懸念される。

「核兵器が使用されるリスクが確実に高まっている」

 そう警鐘を鳴らすのは、長崎大学客員教授で、平和・軍縮問題に取り組むNPO法人ピースデポ代表の鈴木達治郎さん(核軍縮・不拡散)だ。

 国家間の緊張感が増せば増すほど、誤解やミスコミュニケーションが起きやすくなり、それが核兵器の使用につながる可能性を高めると指摘する。

「核兵器がすぐに使われる可能性は低いですが、いま核保有国が存在するヨーロッパや中東、南アジアで軍事衝突が起きており、軍事衝突が起きていない北東アジアでも緊張感が増しています」

現役核弾頭9615発

 6月、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は世界9カ国(ロシア、米国、中国、フランス、英国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)が保有する、配備されいつでも使える「現役核弾頭」は計9615発あるとする推計を公表した。前年から32発増加し、2018年に現役核弾頭数が増加傾向に転じて以降、7年間で計364発の増加となった。

 最多はロシアで4310発、次いで米国の3700発。この2カ国だけで世界の約8割を占める。増加率では、北朝鮮が7年間で233%増やしトップ。続いて中国(150%)、インド(44%)、パキスタン(21%)の順となる。

 鈴木さんは、「核の量だけ見ても、核軍拡の時代に入っている」と指摘する。

「背景にあるのが、核を持つことで相手国に攻撃を思いとどまらせる核抑止への依存です。核保有国は、核抑止が絶対的に必要だという大前提でいます」

 さらに、「質的にも核軍拡に入っている」と言う。

「精度の高い小型核や、核兵器を搭載できる自走式の巡航ミサイルや戦闘機など様々なタイプが開発され、質の面でも高くなっています。いつ、どこで、どのような核兵器が使われるかわからない状況です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2025年7月14日号より抜粋

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