正月三が日は2階席まで満員になった初席だが、7日ともなると、よく言えば正月の浮かれ気分が落ち着いて聴きやすくなったが、正直に言うと、客席にもう少し同志がほしい。
高座に現れるや、客席をザーッと見渡した夢丸が、思わず社交辞令を口走る。
「うーん、満員といっても過言ではありません……、過言でした(笑)。でも、お江戸上野広小路亭は厳かでしたよ。今、言葉を選んでますが、(末広亭は)広小路亭の9倍はいます」
何処の寄席も正月明けは苦戦しているようだ。
突然始まる正月名物「寿獅子」
ザ・ニュースペーパーの「政治コント」に、ニセの石破茂首相が現れた。上目遣いの表情、ベタッとした口調など、何とも怪しい仕上がりだ。
「口の中に綿を入れて、山田かつらで15万円払って。そういう努力をして首相に化けていますが、果たしていつまでもつか……」
ニセ石破の意味不明のスピーチを受けて立つのは、藤井聡太七冠の偽物だ。小声で早口、何をいってるのか聞き取りにくいあたり、なかなかよく研究している。
「政党を将棋の駒に置き換えると、自民党は金、共産党は香車ですね。一本筋は取っているが、融通がきかない。立憲は銀だが、歩がいない(不甲斐ない)」
いったん幕が閉まるが、何のアナウンスもなく再び幕が開いて、正月名物、太神楽社中による「寿獅子」が始まった。第三部は仲入休憩がないようだ。
「活弁」の坂本頼光は前座にやらせず、自分で高座に棒を立てて映写用スクリーンを設置する。フランス映画「赤ずきん」の実写版はツッコミどころ満載の無声映画だ。
「私たちのイメージする赤ずきんちゃんと違う点が3つあります。第一に、頭巾が白い(笑)。第二に、どう見ても30歳過ぎ。もう一つ、狼が犬にしか見えない」
頼光の見どころ解説は的確で、三つの相違点を確認するだけで観客は大笑いだ。浪曲といい、活弁といい、これまでにほとんどなかった色物の加入が、芸協らしいバラエティ寄席の層を厚くしている。