専用機で約5時間かけてモンゴルのチンギス・ハーン国際空港に到着された天皇、皇后両陛下
専用機で約5時間かけてモンゴルのチンギス・ハーン国際空港に到着された天皇、皇后両陛下

モンゴル訪問で期待することとは

 つげさんは「こうした海外における戦没者への哀悼の意を伝えることで、改めて“平和とは何か”を問い直す旅となるのでしょう」と言う。

「シベリア抑留者たちは約60万人にのぼるとされています。シベリア抑留者は、シベリアだけでなく、今回の公式訪問先のモンゴルなど北方の各地に移送され、多くの人たちが劣悪な環境で過ごし、飢えや寒さ、重労働を強いられ命を落としています。そんな戦争の悲劇を味わった日本人を忘れてはならないという思いで、御霊に祈りをささげるご訪問なのだろうと思います」

 つげさん自身も親族のひとりがシベリア抑留者だったという。抑留されていた地には食べる物がなく、野ねずみを捕まえて、焼いて食べていたとか。野ねずみがいたおかげで生き延びることができたという。抑留者の中には飢えに苦しみ、重労働を課されて亡くなっていた人もたくさんいたそうだ。その親族は、「ダモイ!」(ロシア語で「故郷へ」という帰国を意味する言葉)と言われ大喜びして、シベリアから鉄道でハバロフスクまで移動した。そこから日本へ帰れるのかと思いきや、移動先で1週間監禁されて共産主義についての「教育」を受け、最後には「スターリン、万歳」を叫んで解放されたそうだ。

 海外での戦没者の慰霊に大きな意義がある今回のモンゴル公式訪問だが、天皇陛下雅子さまが訪問されることで、つげさんが期待することがあるという。

「日本で活躍しているモンゴル出身の力士の方々が、モンゴルへの関心を高めてきました。朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、豊昇龍、霧島など多くのモンゴル出身の力士が相撲で活躍するために来日しました。その相撲の人気を受けて、モンゴルの人たちも日本に興味を持っています。日本とモンゴルの間では、留学生などの交流が頻繁に行われ、陛下もご訪問前の記者会見で、平成19年に1100人ほどだったモンゴルからの留学生が、今では4倍以上に増えていると話されています。モンゴルとの親密な関係はさらに高まって、文化交流も活発になり、専門分野での研究者の交流も深まっています。今回の天皇、皇后両両陛下の訪問によって、様々な分野の交流が今以上に広がっていくきっかけになってほしいなと思います」

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