秋山と喪黒福造の重なる部分
そんな秋山の芸風は、まさに喪黒福造というキャラクターの本質と重なる部分がある。喪黒は表向きは丁寧な言葉遣いで紳士的だが、得体の知れない狂気を潜ませており、いつの間にか相手の心の奥底に入り込み、破滅への道を開いてしまう。喪黒という存在によって、現代社会が抱える問題が象徴的な形であぶり出されてくる。その人物像は、秋山の演技領域の中でも最も深いところと共鳴している。
喪黒福造は単なる怪人物ではない。人々の望みを叶えてあげる一方で、その奥に人間の業や欲望の闇を浮かび上がらせる存在である。秋山も、私たちが生きている何気ない日常から「ユーモア」を取り出して、目の前に提示してみせる。最終的なアウトプットがネガティブなものかポジティブなものかという違いはあるが、喪黒と秋山の営みにはどこか似通ったところがある。
「得体の知れない笑い」の感覚は、今作の実写化において最も重要なファクターである。秋山をメインキャストに据えた「笑ゥせぇるすまん」は、かつて原作やアニメに親しんだ世代にも、令和の視聴者にも、新鮮な驚きをもって迎えられるだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)
こちらの記事もおすすめ ロンドンブーツ1号2号の突然の「解散」に悲しさがない理由 田村淳と亮は“熟年離婚”?