プーチン氏は、エリツィン政権時代に影響力を持った側近グループや新興財閥を政権中枢から退ける冷徹さも持っていた。広がった2人の距離を示す苦渋に満ちた表情は、映画のハイライトだ。
マンスキー監督はウクライナ出身。映画が完成したのは侵攻前の18年だが、ウクライナは14年から東部地域が親ロシア派勢力に支配されるなど大国の思惑に翻弄(ほんろう)されてきた歴史がある。監督自身も14年3月にラトビアに移住せざるを得なくなった。そうした背景も、プーチン大統領批判につながっている。
同作は18年、チェコの「カルロビ・バリ国際映画祭」で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。今春、日本での上映が決まった。
プーチン政権は今も反対勢力や報道機関への「弾圧」を続け、議会、政党、メディアから批判の声はほとんど出てこない。支持率は常に約8割にのぼる。マンスキー監督が伝えたいことは、ただひとつだ。
「自由と民主主義は常に守り続けていかなければならない」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋