
元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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電車に乗る時「切符」というものを買って乗ることもできるということを、皆様ご存じでしょうか……と言いたくなるほど、世の中から急速に「切符」が消えつつある。っていうか、もしかするとリアルに「切符って何?」と真顔でおっしゃる方もかなりおられるような気もする。
なぜこんなことを書くのかといいますと、私こそは、もはや絶滅危惧種となった「切符派」だからである。なぜそんなことを続けているのかを書き始めると長くなるのでとりあえずそこは省略するが、今や圧倒的な少数派となった結果、なかなかのことが起きているのであります。
まず手始めとして、切符で通過できる自動改札がめちゃくちゃ減ったため、混んでいる時は間違った列に並ぶリスクがあまりにも高く、ある程度空くのを待ってから列に並ぶのが習慣になった。