
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年7月7日号には日本コンベヤ エンジニアリング本部 技術・生産・工務部 機械設計 中谷空さんが登場した。
【写真特集】大物がズラリ!AERA表紙フォトギャラリーはこちら
* * *
主に都市部で導入されている機械式立体駐車場。限られたスペースでも効率よく駐車でき、迅速に出し入れできるのがメリットとされる。
その設計、製造、施工といった工程を一貫して行う自社で、主に設計を担当する。どんな形状の敷地でも最適な駐車スペースが確保できるよう、顧客が求める仕様や性能に合わせて構造や寸法を考える。
「建物はコンパクトにして、駐車スペースは大きくしたい。両方をかなえるために柱などの配置をミリ単位で調整しています」
設計にあたり寸法の間違いや形状の誤りといったミスは、その後のプロセス全体に大きく影響する。工程が製造や施工の段階に移ってからの修正は生産性の低下を招くため、念入りな確認は欠かせない。
そのことを実感したのは、入社して間もない頃だった。すでに建っていた機械式立体駐車場の柱や梁(はり)を残したまま、内部を新しく施工するための設計を任された。しっかり設計したはずだったが、現場では敷設されている配管と部材がぶつかるという思いもよらないミスが起きた。
「部材を作り直してもらい、大ごとにはなりませんでしたが、設計のミスがどれほど多くの人に迷惑をかけるかがわかりました」
描きあげた図面はどうしても早く次の部門に引き渡したくなるが、それ以来、一晩置くようにしている。いったんその場を離れることで冷静な視点で見直すことができ、ミスが格段に減ったという。
それでも後で間違いを見つけることはある。「気がついたらためらわずに上司に伝えます。時間がたつと作業が進み、トラブルが大きくなるからです。ミスは言い出しにくいものですが、安心して発言できる環境に感謝しています」
幼い頃から姫路城や明石海峡大橋などの建造物に魅了され、大規模な物を造る仕事に憧れていた。その夢を組織が一体となってかなえられることにやりがいを感じている。
「まずは社内のみんなに『君になら安心して任せられる』と言ってもらうのが目標です。将来的には同期と一緒に組織を率いていきたいです」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年7月7日号
こちらの記事もおすすめ 梅雨の時期にいかが? 洗濯機の清掃、年間700台 新品同様ピカピカに