2021年のドラフト会議でぎりぎりで指名され、会見で涙を見せた北山
2021年のドラフト会議でぎりぎりで指名され、会見で涙を見せた北山

ドラフト会議で最後から2番目の指名

 加速度的に進化している北山だが、2021年ドラフトでは8位指名で、12球団全体で指名された77人中76番目に名前を呼ばれた。高校の時もドラフト志望届を出したが、指名漏れと悔しい経験をしている。大学の4年間でレベルアップしたが、再び悪夢がよぎったのだろう。ドラフト会議の開始から2時間以上が経過した後に日本ハムから指名されると、記者会見で涙を流し、「やっと、自分の目指していた、プロの世界で戦えるスタートラインに立たせていただいた」と話した姿が印象的だった。

 アマチュア時代に決して無名な存在ではなかった。京都成章では3年夏にエースで19年ぶりの甲子園出場に導き、甲子園初戦の神村学園戦では8回まで毎回の11奪三振の快投を見せた。京都産業大に進学後も1年時から抑えとして活躍し、4年春のリーグ戦では2試合連続完封勝利をマークするなど、リーグトップの59回1/3を投げて69三振を奪い、最優秀投手賞を受賞している。

「まさかこんな凄い投手になるとは」

 実績を見れば上位指名でも不思議ではないように感じられるが、なぜ他球団は指名を見送ったのか。セ・リーグ球団の近畿地区担当のスカウトは複雑な表情を浮かべる。

「快速球は魅力でしたが、制球力と変化球の精度に物足りなさを感じました。完成度もまだまだでしたし、即戦力としてプロでは厳しいかなと。投球フォームも独特だったので、他のスカウトたちと映像を見た時に『故障のリスクが高い』と感じたのも指名を回避した理由です。社会人野球で洗練されたら2年後に上位指名になるかなと思いましたが、まさかこんな凄い投手になるとは想像できなかった」

 北山の投球を高校時代から視察していたパ・リーグ球団の編成担当はこう話す。

「あれだけの直球を投げられる投手はなかなかいません。ただ制球がバラついていた印象があったので、2、3年後に中継ぎで活躍するイメージでした。当時ウチの球団は大卒、社会人で獲得するなら1年目から稼働する投手がほしかったんですよね。北山はニーズに合わなかったのでリストから漏れてしまった」

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