たしかに、「老いるショック」効果の極意は「ひとりボケツッコミ」で完結できることなのかもしれない。
「そうそう、僕には本名の『三浦純』とペンネームの『みうらじゅん』があるんですが、でも、漢字はこうだけど、ひらがなはこうすべきだとかって、漢字がひらがなに指示与えたりもします。老いるショック連載でも投稿者さんは大概はペンネームです。実情はこうなんだけど、これじゃウケないと思うと、人はペンネームを使って盛って書くようになるんだと思います。もう1人の人格を作って、そいつにツッコミ入れたりボケたりしてると結構1人でも面白いんじゃないでしょうか」
全国の単身世帯は2020年時点で2115万世帯(38%)。50年には27都道府県で4割超になるとの予測もある。みうらさんの提言は単身世帯予備軍にも参考になりそうだ。
「自分らしさとかは決めつけないほうがいい。『あいつらしいな』っていうのは他人が決めることですからね。となると、老人とか若者っていう考えもそもそもないんじゃないかな。ジョン・レノンの『イマジン』の域、または般若心経でしょうか。 般若心経も全てないって……」
みうらさんの世界観に引き込まれ、無料版Zoomの40分制限にかかっているのに気づかず、ここでブツッっと通信が途切れてしまった。しかも最もこの先が聞きたいというタイミングで……。万一、みうらさんが再入場してくれた時に備えて画面を凝視していると、自宅で飼っている15歳の老ネコが背後のソファに嘔吐した。これで完全にパニックに陥った筆者はしばし茫然。数分後(たぶん)、そう言えば仲介してもらった編集者の携帯の電話番号がメールに書いてあったはずだと思い出し、かけてみると、すべての事情をのみ込んだように「あとは締めの一言ですよね。この電話で(みうらさん)本人に代わりましょうか」と言ってくださった。平身低頭、みうらさんに「締めの言葉」をお願いした。
筆者「本当に申し訳ありませんでした。では、最後におっしゃっていた、あの続きをお願いします」
みうらさん「どんな話でしたっけ?」
筆者「いや、みうらさんがおっしゃりたかったことですよ。あの、めっちゃ興味深い、ほらっ最後に言ってくださった、ほら……」
「ほら」の先が出てこない。ちなみに「イマジン」のくだりは、取材後に文字起こしをしてつづったものだ。スマホ越しに半笑いのみうらさんは、それでも丁寧に「締めの言葉」をくださった。しかし、もはや筆者の頭は真っ白で受け止めきれなかった。電話を切った後、自分を指さし確認してもちろんこう言った。
「老いるショック!」
(AERA編集部 渡辺豪)
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