みうらじゅんさん(c)文藝春秋
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 「年を取る」とはどういうことなのか。“イラストレーターなど”として活躍しているみうらじゅんさんのスタンスは「若づくり」や「アンチエイジング」に抗うロックの精神。それが「老いるショック」であり、「老けづくり」であり、「アウト老」なのだ。

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 みうらじゅんさん(67)の近著『アウト老のすすめ』(文藝春秋刊)。調べると、「老いるショック」というワードは約20カ所で使われていた。だが、そこに大きな意味はなさそうだ。問うと、みうらさんの内面では「老いるショック」、「老けづくり」、そして「アウト老」の境地へと三段論法的に順に進化していったという。まず、「老いるショック」という造語はいつ、どんなシーンで生まれたのか。

 「還暦前にはもう考えていたのですが、人間ってなんなんでしょうね、老いることでもマウント取る感じ、あるんじゃないかと思いましてね。『あいつ、若いくせに何言ってんだ』とか。だから、還暦過ぎてから使うようになりました」

 「老いるショック」にはどういう意味、思いが込められているのか。

 「そもそもは『考えてもしょうがないことには、しょうもないことでごまかしていく』技法のひとつです。自分のちょっと老いてきた部分に対して指さしをして、『老いるショック!』と言ってみる。きっと老いに伴うハンディを笑い飛ばしていけるんじゃないかと。そんな呪文のような言葉なんです」

 AERAが実施した「老いるショック」に関するアンケートでは、回答者はアラフィフ女性に集中した。ミドル女性に刺さるワードなのだろうか。

 「基本は『ひとりボケツッコミ』なんですよね。年取るとシリアスになっちゃう人、多いじゃないですか。でも、人生をコメディーと思うか悲劇と思うかは自分次第。僕はシリアスになりがちな自分が嫌だったんで、人生はコントっていうことでやっていこうと思ったんです。『アウト老のすすめ』は一見、エッセー仕立てになっていますが、僕はエッセイストとコント作家の間、『コントスト』っていう、ないジャンルなんだと思っています」

 通販生活別冊の『益軒さん』で「みうらじゅんが選ぶ 老いるショック」という連載を担当しているみうらさん。累々たる「老いるショックエピソード」に接してきたに違いない。そう思って珠玉のエピソードを問うと、「いちいち覚えていない」とのこと。それよりも強調したいのは、投稿するシニアとの関係性だという。

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