
落語には「三題噺」というものがあります。客席から3つのお題をいただき、それをもとに即興で噺を作るという趣向で、古典落語の名作「芝浜」も三題噺(お題は「酔っぱらい」「革財布」「芝浜」)と言われています。今回の『雲助おぼえ帳』も、たとえて言えば、あたしが若いころに作った「ホームページ」、長井さんによる「インタビュー」、喫茶店で飲んだ「アイスコーヒー」の三題噺である、とするのは少し強引すぎるかなあ。
人間国宝の認定書交付式には、師匠・十代目金原亭馬生の形見の紋付を着て行きました。少しは師匠への恩返しになったでしょうか。今回の書籍によって、師匠・馬生をはじめとする諸師匠・諸先輩が落語について教えてくださったさまざまなこと、そしてあたしなりにこれまで調べたり考えたりしてきたことをまとめられたように思います。武藤奈緒美さんがこれまで撮ってくれた膨大な高座写真から何枚か使えたのも、嬉しいことです。
編集者も嬉しいようで、私が日頃お世話になっているオフィスエムズの加藤浩さんに相談して、出版記念落語会までセッティングしたとのこと(雲助ボロ市番外編~『雲助おぼえ帳』出版記念落語会 令和7年7月22日 東京証券会館ホールにて。午後6時半開演)。本人は「(会の)チラシ作りました」「前売り券○枚売りましたよ」と喜んでいるようですが、あれで本業の仕事はちゃんとしてるのかしら。
それはともかく、私の落語に対する思いの一端が、こうして活字になりました。これからは若手に稽古を頼まれたら、「その前に、まずこの本を読んでみて」なんて言ってみようかなと、密かに思っています。
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