"ジュリー"の呼び名で昭和の音楽界、芸能界の頂点に立った沢田研二が6月25日、77歳の誕生日を迎えた。「君だけに愛を」（1968）、「危険なふたり」（1973）、「時の過ぎゆくままに」（1975）、「勝手にしやがれ」（1977）、「TOKIO」（1980）など大ヒット曲を連発し、賞レースも総なめ。近年メディアからは遠ざかっているが、なお毎年数万人規模を動員するライブツアーを続ける伝説級のミュージシャンだ。日本のロック・ポップス史上で、彼の存在意義はどのようなものか解説したい。
現代アイドルの元祖として
沢田が「ザ・タイガース」のボーカルとしてデビューを果たしたのはグループサウンズブームのさ中の1967年。ビートルズやローリング・ストーンズなど海外のロックバンドに触発されたタイガースの面々だったが、デビュー後に所属事務所が進めたのは、彼らの憧れとは正反対のアイドル的な売り出し方だった。とはいえ彼らはその要望に十二分に応えた。
それまでのスターといえば、石原裕次郎、加山雄三のような“男くさい”スポーツマンタイプ、もしくは浜田光夫のような純朴な好青年タイプと相場が決まっていたが、沢田のフェミニンで王子様的なルックスは、性的な価値観が変化する当時のニーズに合致。以降のアイドル像を塗り替えてしまった。ジャニーズ事務所の創始者のジャニー喜多川氏が、アイドルの理想像として沢田の名前を挙げていたのは有名な逸話だ。
ロック音楽のトップランナーとして
アイドル、歌謡スターといったイメージが強い沢田だが、本人はロックンローラーであろうと絶えずもがいていた。なかなか世間からそのように認知されない苦しみはあったようだが、ザ・タイガース解散後に萩原健一、井上堯之らとニューロックグループ「PYG」を結成したこと、ソロに転じてからも絶えず自身のバックバンドを引き連れ活動したこと、1974年から82年にかけて洋楽ロックを交えた全国ライブツアー「ロックンツアー」を開催したこと、80年代前半に「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」（1981）、「六番目のユ・ウ・ウ・ツ」（1982）、「晴れのちBLUE BOY」（1983）など最新の洋楽ロックを取り入れた楽曲をヒットさせたことなどは日本にロック音楽が普及する上で大きな意味があったはずだ。また大手事務所から独立した85年以降は沢田自身の生きざまや政治思想が投影されたロックナンバーが数多く発表されている。日本一売れてしまったがゆえの遠回りはあったが、今沢田がロック音楽のトップランナーであることを否定する人はいないだろう。
