いとう・えみ/1967年、東京生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)(撮影/写真映像部・山本二葉)
いとう・えみ/1967年、東京生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)(撮影/写真映像部・山本二葉)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】生きやすくなる方法を教えてくれる一冊

 「自分にやさしくする」ことは、一種の「スキル」すなわち「技術」だ──と、著者の伊藤絵美さんは説く。セルフケアは「一人で頑張る」ものではなく、日常のストレスに気づき、心の根っこにあるもやもやを解消することで、自分にやさしくする技術は身につけられる。自転車の乗り方を覚えるように、自分の内外にあるサポート資源を見つけることで、生きやすくなる方法を教えてくれる、実践的な本となった『自分にやさしくする生き方』。伊藤さんに同書にかける思いを聞いた。

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 公認心理師、臨床心理士の伊藤絵美さん(57)は認知行動療法、スキーマ療法について、多くの本を書いてきた。

「かれこれ30年以上、カウンセリングをおこなってきました。うつ病や不安症といったメンタルヘルスの問題を抱えている人、心理的なストレス、トラウマの後遺症など、表向きの困りごとはさまざまですが、そこには『自分に厳しい』という共通した特徴があります。『自分はダメだ、甘い』と、レッテルを貼り、自分に対して厳しくすることで、ますます心身の状態が悪化するという悪循環にはまってしまう人が多いんです」

 そう語る伊藤さん自身も、「自分に厳しかった」と振りかえる。家族の病気介護、手術、死──といった出来事が立て続けに起こり、対応に追われていた時期のことだ。

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