
東京大学准教授・動物言語学者、鈴木俊貴。シジュウカラに「言葉」があることを発見。それだけでなく、鈴木俊貴が発表した論文は、世界でも注目されている。とにかく幼いころから生き物が好きだった。野山に入っては昆虫を探し、やがて鳥に興味を持つようになった。まだまだわからないことがたくさんある。鳥の研究が何より楽しい。鳥の声を聴き、好奇心のまま羽ばたく。
【写真】ラジオ番組に出演 ルー大柴の「ルー語」に例えてシジュウカラのことを熱く語る





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桜がほころび始めた4月末の長野県軽井沢町。ここの森が、シジュウカラを対象に動物言語学を研究する鈴木俊貴(すずきとしたか・41)のホームグラウンドだ。標高の高い森の中、若葉から漏れる陽光を頬に映しながら、鈴木は足元を確かめることもなく速足で歩いていく。以前セットした巣箱の蓋を開け、鏡で中をのぞいて、シジュウカラが巣作りの準備を始めたかどうか確認するのである。たまに車のエンジン音がする以外、森に響くのは鳥の鳴き声と梢を揺らす風の音だけ。鈴木はここで年に数カ月間、シジュウカラを観察するフィールドワークをして過ごす。
「所属先はあちこち替わったけど、やってることは変わりないんですよ」

高校生の時に鳥の観察を始め、大学でシジュウカラ研究を始めた。それ以来、彼の研究対象はずっとシジュウカラ。それまで鳥には「言葉」がないと言われていたが、シジュウカラが他の生物の「言葉」を理解し、鳴き声によってさまざまな会話を交わしていることを発見し、次々と世界的に注目される論文を発表してきた。2022年にはスウェーデンのストックホルムで行われた国際行動生態学会で基調講演も行っている。私は数年前に偶然テレビ番組で鈴木を見て「知る人ぞ知るユニークな研究者」と思い、取材を申し込んだ。