高校野球をテレビで見ている人は多い。甲子園常連校のオリジナル応援は記憶に刷り込まれ、口ずさめる曲も多い。甲子園や地区大会へ足を運ばなくてもNPB球場で名物応援ができるので、盛り上がるのは当然」(ロッテ関係者)

 その他にも今季は、楽天が仙台育英高や花巻東高など東北を代表する5校とのコラボを敢行。西武は花咲徳栄高、浦和学院高とタッグを組んだ。オリックスと大阪桐蔭高との共闘は恒例になりつつある。

「球場に足を運ぶファンの多くは、応援に参加して楽しむことを望んでいる。試合の勝ち負けも大事だが、振り付けをしながら声を出すことで非日常の空間に浸りたいのではないか」(スポーツマーケティング会社担当者)

 チケット販売にダイナミックプライシング制(価格変動制)を導入する球団が増え、価格高騰していることに賛否両論がある。しかし「応援を積極的に楽しむ」ことで、チケット料金の“モト”を取り戻そうとするファンが増えているのだろう。

「合理的な考え方だと思います。試合の勝敗は運も含めて左右できないので、応援を徹底的に楽しもうということ。贔屓チームのみならず、有名高校の応援まで楽しめる。他球団選手の応援に参加できるオールスターや侍ジャパンの試合が人気なのと同様の理由で、音楽フェスを楽しむ感覚です」(スポーツマーケティング会社担当者)

 かつては長嶋茂雄さんが、「鳴り物応援のない『球音を楽しむ日』を作ろう」と提案・実施したことがあった。その後も同様の試みがなされたが、NPBで定着することはなかった。

「野球の楽しみ方が大きく変化した。球音をかき消す“鳴り物応援”に苦言を呈すのは、老害扱いされる。積極的に応援を盛り上げた方が、集客につながりビジネス的旨みも大きい。今後もコラボをする球団は増えるだろう」(スポーツマーケティング会社担当者)

 近年はどの球場も客足好調、グッズや飲食収入も含め各球団の収益は右肩上がり。プロ野球人気への危機感から2005年に“球界再編”がなされてから20年。当時を考えればNPBは素晴らしい状況になっている。

「チーム状況と関係なく観客動員できるのなら、うちもコラボを本気で考えた方が良い。今のままでは数年は勝てなそうだから……」と、ヤクルトOBが試合後に語っていたのが印象的だった。ヤクルトや巨人が早稲田実業高や帝京高とコラボ応援をする日も近いかもしれない。

 また、NPBだけでなく侍ジャパン高校代表と大学代表の強化試合でも、高校と大学の応援団が派遣され場内を盛り上げる光景がある。日本球界全体に参加型応援ブームが巻き起こっており、この流れはしばらく止められそうもない。

こちらの記事もおすすめ 佐々木朗希の“故障体質”を把握していたロッテ 「今が売り時」のメジャー放出は最善の選択だった?
[AERA最新号はこちら]