
公認取り消しは「非人道的な行為」
ある永田町関係者は「裁判ざた」になる可能性にも言及する。
「はっきり言って、これは人権問題ですよ。玉木代表は『(山尾氏に)記者会見をやらせます』と言っていた。だから山尾さんは会見を開いた。それにもかかわらず、会見から24時間もたたないうちに公認取り消しというのは非人道的な行為です。山尾さんが国民民主党を訴えてもいいくらいの人権侵害だと思います」
選挙で公認を取り消された候補者が党を訴えるという例はこれまであまりないと思われるが、山尾氏が人権侵害訴訟などを起こすことはできるのだろうか。
元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はこう語る。
「訴訟にはなじみにくいケースですね。公認するかしないかは、最終的に政党に裁量があるうえ、公認内定にどれだけの確実性があるのかという話にもなる。法的には選挙の公示前の段階で公認の“内定”を出しているだけですから。もし事実上、公認決定のように受け取られていたとしても、公示前は選挙運動はできないので、あくまで国民民主党所属議員としての政治活動を行っていたに過ぎません。つまり、公認取り消しで被った実害を認定しにくいのです」
山尾氏は選挙に向けてすでにチラシや名刺を作り、事務所開きもしていた。それに使った費用の補填を求めることはできるのか。
「公認前提で諸費用をかけたと言っても、それは自分の見込みで公認が得られそうになったから選挙に向けての政治活動をやっていたということにしかならない。法的には自分の政治活動上の判断としてやっていたものとみなされると思います。おそらく、国民民主党側が何らかの補填は考えるでしょうが、仮に党から『すでに使った費用の責任は持てない』と言われたとしても、これを不法行為で賠償請求することは容易ではありません」(同)
むしろ、今回の公認取り消しは道義的責任が大きいと、郷原弁護士は説明する。
「不法行為として法的責任を問いにくいぶん、逆に党幹部の道義的、社会的責任は一層大きいと言えます。法的に問題がなければ何でもやっていいのかということではなく、公認に関する党執行部の判断や対応に重大な問題があったことは確かです。法的責任では決着がつかない問題であるだけに、余計に党幹部の政治的責任が重いと言えます」
山尾氏の公認取り消し騒動は、これからの都議選、参院選とまだまだ尾を引きそうだ。
(AERA編集部・上田耕司)
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