巨人時代の高橋さん
巨人時代の高橋さん

本気でぶつかってくれて愛情を感じた

 長嶋さんは華やかで笑顔が似合う太陽のようなイメージが強いが、勝負にこだわる執着心が凄かったという。

「普段は優しいけど、ユニフォームを着た時は本当に厳しかったですよ。勝ったらほめてもらえるしガッチリ握手してくれるけど、ダメだった時は『なにやってるんだ!』って何度も言われました。でも本気でぶつかってくれたので愛情を凄く感じましたね。僕はプロ1、2年目を長嶋さんの下でプレーしましたけど、夢の中にいるような感覚でした。選手も凄いメンバーだったし、今振り返っても宝物のような時間ですね」

 当時の巨人はスター集団だった。松井秀喜、清原和博、江藤、マルティネス、高橋由伸、二岡智宏、仁志敏久、工藤公康、斎藤雅樹、桑田真澄、槙原寛己、上原浩治と球界を代表するタレントがズラリ。

「個性的なスター選手ばかりでしたし、長嶋さんでなければまとめられなかったと思います」

 明るい性格の高橋さんはビールかけや納会の席で盛り上げる姿も話題になったが、はしゃぎすぎて球界OBから苦言を呈されることもあった。

「反省しています。若かったからとはいえ、恥ずかしいですね。日本一になった00年は納会の後にV旅行があったので、長嶋さんにゴルフ場で『粗相しました』って謝りに行ったんですよ。怒られると思ったら、『宴会部長だな』とうれしそうに言われて。申し訳ない気持ちでいっぱいでしたけど、少しホッとしました」

「常に見られている」という意識を学んだ

 長嶋さんが監督を勇退した01年オフ。高橋さんが結婚を電話で報告したところ、声を弾ませて喜んでいたという。「責任感を持ってやりなさい」という言葉は今も耳に残っている。日米で16年間プレーしたが、長嶋さんと過ごした2年間は自身の野球人生にどのような影響を与えているか。

「直接言われたわけではないですけど、『プロ野球選手は常に見られている』という意識は長嶋さんから学びました。どの球団に行っても、成績が出ない時期も、グラウンド外でも常に立ち振る舞いは意識していました。僕だけでなく、長嶋さんの下でプレーした選手たちはその思いがあると思います」

 長嶋さんに最後に会ったのは6年前。挨拶を交わして元気そうな姿が脳裏に焼きついている。

「野球界に尽力して走り続けて無理をされた部分があると思います。ゆっくり休んでください。ご冥福をお祈り申し上げます」

(平尾類)

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