
マンション管理をめぐるトラブルが増えている。公益財団法人マンション管理センターによると、マンション住民や管理組合、管理会社から寄せられる相談件数は年々増加傾向だ。「居住者間のマナー」に次いで多いとされるのが「建物の不具合」や「費用負担」。そうしたトラブルは、築年数を経るほど深刻化する傾向にあるという。近年は物価高の影響も重くのしかかる。
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首都圏にある総戸数400戸のタワーマンションで管理組合の理事長を務めた経験を持つ竹中信勝さんも、その対応に追われた一人。その当時の体験を『タワマン理事長――ある電通マンの記録』として、今年書籍にまとめた人物でもある。
次の人に任せようと考えてしまいがち
竹中さんが当時を振り返る。
「私が理事長に就任する前年に初めての大規模修繕を行ったのですが、修繕積立金が足りず、外壁の塗り直しは先送りされました。そんな組合の財政状況に不安を感じて、マンション管理士に相談したところ、『このままだと維持・管理にかかわる支出が増えて、組合の財政は6年後に赤字になる』と言われました。それで私は、修繕積立金を3倍に値上げする議案を臨時総会にかけることを決めたんです」
多くの新築マンションでは「買い手がつきやすいように、売り出しの際にはマンションディベロッパーが修繕積立金を低く設定している」(竹中さん)。そのため、管理組合はいずれ値上げの必要に迫られるのだが、お金のからむ問題は住民間で紛糾するのが必至だ。先のマンション管理センターのアンケートでも、36%のマンションが「修繕積立金不足」にある現場が報告されている。
「マンションによって異なりますが、理事の任期は1、2年。すぐに交代するから、面倒な値上げは先送りして次の人に任せようと考えてしまいがちです。それまでの理事らも積立金不足の現状を認識していたのに、手を付けなかったのです」(同)
このままではマンションの維持・管理ができないことを知らせる資料を準備して、計6回説明会を開催したという。