
大学の講義で本を読むことは「タイムパフォーマンス(タイパ)が悪い」。そんな大学生が増えているようだ。書店にない課題図書を手間とお金をかけて入手し、時間をかけて読む……。そんな講義に「意味があるのか」という違和感を抱く学生たち。新型コロナ禍でのリモート講義の録画を「倍速」で見てきた学生たちに、大学側はどう向き合うのか。
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昨年10月、都内にある私立大で日本文学史を教えている男性教授に講義後、男子学生が声をかけてきた。
「先生、推薦図書を買わなきゃ、レポートを書けないですか」
教授は講義のなかで、課題のレポートの参考にしてもらうために4~5冊の推薦図書を紹介していた。
「そんなことはないけど、買うか、図書館で借りるなどして読んでみたほうが、レポートは書きやすくなるんじゃないかな」
教授がそう返すと、学生は言った。
「では、要約を見ます。ありがとうございます」
この学生は、講義後に書かせているリアクションペーパーにも、「推薦図書を買う必要ありますか」と書いていた。そしてほかの学生からも、課題図書を読む必要性についての質問があったという。
教授は自身が担当するゼミで、「大学の講義のために書籍を読むことに、タイパが悪いと感じるのか」と学生たちに聞いてみた。すると、ほとんどの学生が、本を読み込んでレポートを書くことに「タイパが悪い」と答えたという。
教授が振り返る。
「おお…これが若者の意見なのか…と、若干ひきましたね」
学生たちは読書よりもAI要約?
学生側はどう思っているのか。
「意味のない作業が多すぎる」
そう話すのは、都内の私大に通う4年生の女子学生(22)だ。講義のなかで、当たり前のように出てくる推薦図書に、違和感を持ち続けてきたという。